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「その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか」は役にたつ

本屋さんで心をもってかれた。

「その子どもはなぜ、おかゆのなかで煮えているのか」

タイトルとファジーな表紙に心をロックオンされてしまった。
「子供がお粥と一緒に煮られていいはずがない!」
誰だそんなイかれたメニューを考案した不届ものは!!見届けねばならない!!

祖国ルーマニアの圧政を逃れ、サーカス団で転々としながら放浪生活を送る一家の末娘が主人公。ピエロの父親にたたかれながら、曲芸師の母親が演技中に転落死してしまうのではないかといつも心配している。そんな時に姉が話してくれたのが、「おかゆのなかで煮えている子ども」の寓話(ぐうわ)だった。

本の紹介

個性的な文体に驚いた。
文章そのものが詩的で一文一文、想像力を働かせて読むことになる。幼い少女の目線で描かれたポイントオブビュー小説だ。
純粋で有りのままを映し出す感受性に惹き込まれてしまった。

例えば「お母さんより先に生まれる子供はいない」と書かれていた。
確かに、、、。
立ち止まったことも気づいたこともなかった。イイことを教えてくれる。

他にもその純粋な感性を綴る文章をあげたらキリがないが、2ページにわたり少女の好きな食べ物が書かれていたところは嬉しかった。
わたしは人の好きな食べ物の話を聞くのが何より楽しい。

なんかピーマンの肉詰めだけ二品あってズルい

訳者あとがきで知ることになったが著者はスイスの女優さん。ルーマニアの近代史、チャウシェスク独裁政権から家族で亡命した自伝的小説。自伝と知ると内容のハードさに驚いてしまう。

おかゆの中で煮えている子供とは、自分より酷い状況の他人を想像することで、いまの苦難を乗り越えようとするイマジナリーhellだ。
なんて不健全な現実逃避だろう。現実逃避は好きな食べ物を並べるに限る。

チャウシェスク政権といえば女性は強制的に5人出産しろという余計なお世話このうえないクソ政策と、国の金でアホみたいにデカい自宅を作って豪遊三昧なクソ家族、、、。
正直ルーマニア革命について、このように派手で気をひくようなトピックスしか知らずに市民の暮らしに想いを寄せたことはなかった。

世の中知らないことが色々あるなー。

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