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頑固爺さんの無表情に対する周りの変化と、日常。
頑固爺さん。
あだ名である。頑固かどうかは分からないけれど、頑固そうだということで、みんながそう呼んでいた。
無表情で、二階の窓からいつも外を眺めている。
頑固爺さんの家は通学路の横に面していて、通り過ぎる誰もがみんな怖がっていた。
ある少女は泣きだし、ある少年は睨んで見つめ、保護者は抗議の手紙をポストに入れ、学校から先生が窓の方を見ないようにと、信号でもないのに家の前で旗を振り、不安を払しょくするために呪文を唱えるものや、ギターで音楽を奏で始めるものもいた。
「……」
頑固爺さんは、特に頑固というわけでもなかった。
ただ、朝の七時から、一時間、健康と鍛錬のため、自分の部屋から外に向かい、つま先立ちをするのが日課なだけだった。
色々と騒がしいのは気づいていたので、止めようとも思ったのだけれど、一度止めてしまうと、健康が損なわれて、そのままズルズルと惰性な日々を送ってしまいそうで、続けていた。
そんな混乱な時期が続いたが、頑固爺さんが無表情であるという以外は特に無害なことに人々が慣れてきた。
ある少女は泣き止み、ある少年は優しい視線を向け、保護者は抗議撤回のお詫びの手紙を書き、学校の先生は旗振りを止め、呪文を唱える者はいなくなり、ギターで音楽を奏でていたものは、駅前広場に移動した。
頑固爺さんは、今日も外を眺める。
一年生だった少年が、四年生になったころ、何度か窓辺から見かけない時が増えた。
少年が立ち止まり、誰もいない二階の窓を眺める。
「……」
少し遅れて、頑固爺さんが無表情な顔を出した。
少年はホッとし、
「頑固だぜ」
と呟き、走り、学校へと急いだ。
頑固爺さんは意外と頑固なのかもしれない。
いや、頑固になっていったのかも。
なぜ?
きっと、頑固爺さんを望むものが増えてきたからかもしれない。
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