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#歴史小説が好き
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第21話「万国公法をエサにして」
齊藤一が菊屋の二階に上がると、やはり毛内有之助がいた。
「齊藤さん、見ていましたよ。中岡慎太郎が近江屋に逃げ込んだのですね。よりによって、近江屋を選ばなくても良いのに」
「毛内さん、ご苦労様。見ての通りだ。厄介なことになった。ところで何かありました」
「伊東甲子太郎さんからの伝言ですが、情勢が変わってきているそうです。土佐薩摩とは深入りせず、距離を置くそうです。そして早々に、御陵衛士を解散し
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第20話「刀を納めろ、作戦変更だ」
再び、大石鍬次郎が足を出した。今度は、一足分だけの送り足。ゆっくりと前足を出して、さっと後ろ足を引きつける。
じりじりと、真綿で首を絞めるように中岡慎太郎ら三人を追い詰めてゆく。
大石にとって、この瞬間が喜びなのだ。それは料理人が、滅多に手に入らない魚をまな板に載せて、自分の好きなように捌こうとしているのと似ている。
前方では、斎藤一が立ちはだかって、しっかりと三人組を足止めしてくれている。
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第19話「月の光に照らし出される刃」
廣瀬は、大石鍬次郎の「抜刀」の号令がかかると、無意識に鯉口を切っていた。
今までの震えが嘘のように止まった。
いつもの稽古のようにゆっくりと刀を抜く。刀身が、妥協を許さない現実の光を放ちながら、弧を描いて目の前で直線に変わる。
剣先だけが、月の光を受けて、名もない星のように弱々しく光る。
廣瀬はそれをゆっくりと頭上に高々と持ち上げる。
刀を上段にとるのと同時に、頭の中を怖さより冷たいもの
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第18話「大石隊の強さの秘密」
「抜刀」
大石鍬次郎が、号令をかけた。
この号令が、かかるまでは絶対に刀を抜いてはいけない。
また、この号令がかかっているのに刀を抜かないのもいけない。
両方とも、隊規違反になる。
場合によっては、切腹を申し付けられることもある。
戦闘にとって、刀を抜く、抜かないが、それほど重要視されるのである。
その「抜刀」の号令がかかった。
小さい鈴のような軽やかな音を立てて、それぞれの刀が抜
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第17話「警護の隙を狙え」
中岡慎太郎は福岡孝弟邸の潜戸で、陽が落ちるのを待っていた。
呼びつけておいて、福岡さんは不在であった。
座敷にも通されず、板の間の控えの間で長い間待たされた。
火鉢もなく、茶の一つも出されなかった。寒くてしょうがない。
何という対応だ。
大体において土佐藩自体が何ごとにおいても、連絡が悪すぎる。
だから、取り残されるのだ。
土佐の者誰もが、薩土盟約が破棄されて、薩長同盟が結ばれたこと
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第16話「敵に背を向かすな」
「分かった。菊屋に戻る」
新選組大石鍬次郎隊に配ったおにぎりが、一人ずつ順番に食べ始め、最後になった廣瀬という隊士が、震える手で懐からおにぎりを出し、不器用な手つきで竹皮をむいて、口に運ばれるのを確認して、斎藤一は河原町通りに出た。
いつものように大手を振って歩くと怪しまれる。懐手をして、屋敷を抜け出して遊郭にしけこもうとしている藩士を装った。
さりげなく中岡慎太郎が潜む福岡邸の前を通り過ぎ