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龍馬が月夜に翔んだ

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2025年1月の記事一覧

短編小説「坂本龍馬暗殺の真相(後編)」

短編小説「坂本龍馬暗殺の真相(後編)」

「ドン」

爆音が近江屋全体を揺るがした。

一瞬間をおいて二階の窓から白煙が飛び出した。

それらは疾風のごとく河原町通りを駆け抜ける。

「何だ」

近江屋の軒先で待機していた新選組の大石鍬次郎は、咄嗟に槍を手に単身近江屋に土足のまま乗り込む。

二階に駆け上がる。

硝煙の匂いが混じった灰が部屋中に立ち込めている。

何も見えない。

天井からバラバラと煤が降ってくる。

どうなっているのだ

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短編小説「坂本龍馬暗殺の真相(前編)」

短編小説「坂本龍馬暗殺の真相(前編)」

「龍馬だけは、絶対に斬るな。生かしておけ」

藤堂平助は一瞬焦った。

体が凍り付いたように動かない。

河原町の近江屋の坂本龍馬の隠れ家に中岡慎太郎が入ったとの情報が入った。

討幕派の中岡は絶対に斬らねばならないが、龍馬は「いろは丸」の賠償金の裏取引で幕府と通じている。

だから斬るなと厳命されているのだ。

藤堂は、服部武雄と二人だけで近江屋の二階の龍馬の隠れ家に突入した。

しかし、先回り

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