2022年10月の記事一覧
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第14話「不吉な予感」
御陵衛士の屯所がある高台寺月真院に戻った伊藤甲子太郎は、すぐさま残っている隊士に状況を伝えた。
土佐藩の置かれている立場、薩摩藩の考えていることなど、包み隠さず話をした。
そして、一段落したら高台寺隊を解散し、新選組本隊に戻れるように近藤勇に話をつけると約束した。
早速、毛内有之介が河原町の菊屋で監視をしている隊士に、それらを伝える役に選ばれた。毛内は伊東が江戸から新選組に加わる時に、一緒に
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第13話「踊る!土方歳三」
齊藤一は、不動堂村の新選組の屯所に着いた。
未だに木の香りが漂う大名御殿と見間違えるほどの立派な造り。齊藤はこの屯所に駐在したことはなかった。
この屯所に移る前の西本願寺に間借りしている時に、高台寺に移った。だから、馴染みはなかった。
何か余所余所しい感じがする。
隊士の中にも、新しく募集された顔を知らない者も、混じっている。
「局長は、おられるか。急用だ。すぐに会いたい」
「不在です
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第12話「無用なものは切り捨てよ」
「坂本さんが、帰ってきているのは知っていました。あの人は薩摩に来た時に、わしの屋敷に泊まってもらった。お龍さんも、一緒だった。あの人は面白い人だ。一晩中、話をしてくれた。これからの世は、刀や大砲ではなしにそろばんと船の時代になるとしきりに言っていた」
「その坂本先生に、今日近江屋で会いました」
「そうかですか、坂本さんにはそこらにいるよりも、むしろ薩摩藩邸に入るように勧めたのだが、まだそこらへ
時代小説『龍馬が月夜に翔んだ』第11話「龍馬に尋ねよ」
「今日は、何用で?」
中村半次郎は尋ねた。
「土佐の坂本龍馬が、京に戻ってきておる。藩邸に入れてもらえなくて、近江屋という醤油屋の土蔵に潜んでおる」
「坂本先生が戻って来ておられるのか。しかし、時期が悪いのう。西郷さんが、おられれば直接尋ねられたと思うが、わしらは聞けん」
「何を尋ねるのだ?」
半次郎は少し考える様子。辺りを気にして声を低くしたが、投げ捨てるような口調で、
「幕府を倒す