秋田の秘湯で一人、混浴露天風呂に入ってみた
長期休みを貰えたけど、それじゃあ何処へ行こうか?
平日にしか行けない、それも遠い場所が良いかな?
そう考えた時に、秘湯と呼ばれるあの場所が頭に浮かんだ。
何故か秘湯というやつは、関西からは遥か遠い東北に多い。そして混浴だ。
混浴に尻込みする気持ちはあるが、こんな機会滅多にない。
思い切って、行ってみた。
もう4月に入ったと言えど、雪深い秋田県。
一般のバスと宿のお迎えバスを乗り継いで、悪路を行く。
こんな雪道を走れるんだな、と思っていた先に、宿が現れた。
見たことのない光景だ。
人気なうえ、電話予約のみで宿泊予約が取りにくい。
しかし昼間は日帰り客が多く、雰囲気が出ない。だから、いつかは泊りで来てみたかった秘湯No.1。
秋田県 乳頭温泉 鶴の湯
雪の中の秘湯温泉である。
湯治棟、六畳一間、一人用。
部屋から見える世界が白一色。地元では滅多に雪が降らないから、それだけで楽しくなってくる。
暦は春だというのに、遠くの山もまだまだ雪化粧。空気はシンと冷えている。
まずは洗い場のある、宿泊者用の内湯に入って髪と身体を洗い温まることに。何をするにも一旦外に出る。その度に見惚れる。
その後、夕飯の時間。
一人もしくは二人客は本陣の食堂に集まって囲炉裏の傍で、皆で並んで食べる。写真の左上には後から茸のホイル焼きも登場。
知らない者同士で食事をする内に、自然と会話が生まれる。
今まで一度も飲んだことの無かった日本酒を振舞われ、これもきっかけと口にする。
山奥まで秘湯を求めてきた者同士、そして宿のおっちゃんの秋田弁がネイティブ過ぎて解らない者同士で会話も弾む。
明日どうするか決まっている人、決めていない人。
連泊する人、帰る人、移動する人、様々で面白い。
寛いだ雰囲気で夕飯を終え、一度部屋へ戻って食休め。
夜も更けてから写真で見て「秘湯……いいなあ……」と憧れていた、あの混浴露天風呂へ。
ざっくざくと雪を踏みしめ、小さな橋を渡り離れへと向かう。脱衣所は男女別。とりあえず服を脱ぎ、タオルを持っていざ温泉へ。
女性が入っていきやすいように、との配慮か途中までは衝立と岩で目隠しがあり、そこから足を浸け、階段を降りつつお湯に入りタオルを取る。
暖色のライトに照らされ、うっすら見える先には何組か先客が。男女共に雪の中のお湯に浸かって楽しげだ。
そんな中に入っていくなんて、普段から考えればなんと不思議な空間だろうか。
そんなに深くはないので中を移動する時は、見えないようにちょっと気を付けつつ動く。
露天風呂は広く、薄ら青い乳白色のお湯は少々温めで肌ざわりが良い。周りが雪山だからか、頭は火照らず、良い感じに冷やしてくれる。
昼間とは違い、日帰り入浴のお客さんは居らず、今の時間は宿泊客だけ。
なので有名なこのお湯を見物しようと、外から見られる心配も無い(混浴は外から結構見えてしまう)
石に腰掛けて休憩しつつ、ぼーっと空を見ていた。足元は砂利が敷いてあり、足の裏がざりざり。
全く不思議な空間だ。夜の静寂の中、知らない人たちと秋田の山奥の、雪で縁取られた露天風呂に浸かっている。
きっと、ここまで来なかったら混浴の露天風呂なんて入らなかっただろう。大人になるのは楽しいものだ。
仮眠を取り日付が変わる頃。静寂に包まれ鼻にツンとくる寒さの外に出る。
夜中は人が少ないと聞いていたので、さっきの露天風呂へもう一度行ってみようと計画していたのだ。
人が少ないと良いな、と覗いてみるとまさかの貸し切りで、本当に一人もいない。自分が立てる音がくっきり聞こえるくらい静かだ。
今回は調子に乗ってど真ん中に座り、後ろ手を付いて色々全開で上を向く。
曇っていたのもあり星は見えない。でも周りの山が全部白い。
ひとり、貸切状態で裸でお湯に浸かり、見上げた暗い空と視界の端に映る白、それにあのぼんやりとした灯りを忘れることはないだろう。
翌朝の朝ごはん。
派手さはないがしっかり品数があり、山の幸満載なのが嬉しい。
ゆっくり秘湯を楽しめたので本当に泊まれて良かった。
今度は連泊したいなあ。いつになるか解らないけれど。
お世話になりました!