
茅の輪くぐりと夏越の祓
【スキ御礼】夏越の大祓
茅の輪を詠むには、夏越の祓い全体を理解しておきたいです。出題を機会に神田明神の夏越の祓いに参列してきましたのでご紹介します。
茅の輪くぐりは夏越の祓の一部であることが分かります。
夏越の祓のそもそもの起源は『延喜式』(九〇五年)に規定されています。大祓の次第は次のようです。
大内裏の朱雀門に内侍・奉行官人・祝師の座が設けられ、酉の刻(午後六時)に諸司官人が着座する。
御贖物(おんあがもの)(祓の具で、人形のようなもの)、祓物(はらえつもの)(罪や穢れをはらうために備える品物)を持ち出し、祓馬が引き出される。ついで神祇官人が切麻(きりぬさ)を頒ち、祝師が祝詞を読み、大麻が配布される。最後に祓物を撤去して終了する。
宮中の行事としては、その後、廃れたようですが、明治になって大祓いの行事が復興したそうです。神社では大祓を年中行事として行っていたそうです。神田明神の夏越の祓いの神事もこの例に倣っているようです。
一、 祝詞の読み上げ
神主が祝詞を読み上げます。参列者は「神拝詞」が配られて、その中の「大祓詞」を神主と唱和します。雅楽が演奏され、巫女二人による「豊栄の舞」が演じられます。

二、裂布による清め
祝詞の読み上げの後、神官二人が一尺四方ほどの絹の布を、参列者の前で、縦に三回、つまり一枚が二枚、四枚、八枚になるまでびりびりと裂いて邪気を祓います。大祓詞の一節『天つ菅麻を本刈り断ち 末刈り切りて 八針に取り辟きて』を模したといわれています。

三、 切麻による清め
切麻は、和紙と麻の繊維を混ぜたもので、祓いの道具の一つ。参列者には事前に切麻の入った小さな紙袋が渡され、自分で自分の心身のケガレを祓う「自祓」をします。

四、 人形による清め
紅白一対の人の形をした紙に、家族の氏名と年齢を書いて、体の左右中央を撫でて、息を三度吹きかけます。この人形は、七月三日に東京湾の船上で、お祓いをしてくださるそうです(人形祓流却神事)。明治時代の宮中では、祓物も浜離宮から海に流したそうです。

五、 茅の輪くぐりによる清め
神職とともに、参拝者が茅の輪をくぐります。日本神話の蘇民将来の故事に由来するもので、茅の輪は腰に着けていたものが、江戸時代を迎えるころに現在の潜り抜けるものになったそうです。

母の分も一つくぐる茅の輪かな 一茶
(岡田 耕)
(あひる句会報2024年6月号)
