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選評*くちづけの口して吹けり紙風船
くちづけの口して吹けり紙風船 岡田 耕
唇を丸めて突き出し、紙風船を膨らませる。その形は正に恋人同士が初めての口づけをする唇の形そのもの。そうして紙風船で遊ぶのは若い恋人同士か。否、若いお母さんが幼児達に紙風船を膨らませて与えたか、一緒に遊んでいるのだろう。愛の象徴であるような口づけの唇の形で紙風船を膨らます、まさに親の愛そのもののほほえましさ。だから突かれる紙風船もあんな優しい音がするのだろう。
近頃はめったに見なくなってしまった紙風船だが、以前は柳行李を担いで家々を回って来た富山の薬売りが必ず手土産に置いていってくれたもの。それがなぜ紙風船だったのか、畳めば軽くて嵩張らないからとばかり思っていたが、薬屋さんは家ごとに愛の象徴を置いていってくれていたのだと掲句で初めて知った。
☆タイトル画像の TOMO さんのオリジナル記事です。黒田三郎の詩『紙風船』のご紹介です。
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