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鑑賞*なんとなくプラス思考の春の宵
山口 香葉
「黄帝内経」という中国の最古の医学書に季節が身体に影響を与えることについて述べられていて、春は、「春三月.此謂發陳.天地倶生.萬物以榮.夜臥早起.廣歩於庭.被髮緩形.以使志生.」とあります。
春の三ヶ月は冬の間に溜まっていたものを体の外に出し、すべての物が芽生え、天地間の万物は生き生きと栄える季節とのことです。
この時期の養生法としては、少し遅く寝て少し早く起き、楽な格好で庭を歩き、髪結いをほぐして、春に芽生えた万物と同じように、心身ともに活き活きと活動するのが良いそうです。
人間の体も陽気が増えてくる時期で、これがストレスなどでうまく発散されないでいると、精神のバランスを崩しやすくなるのだそうです。
普段はそれほどでもないのに、些細なことに心が揺らいで、「なんとなく」前向きに考えようと夜更かししている。
そうさせているのは、春の仕業にほかならず、中国古来の春の養生法に適った心持であるとも言えそうです。
「なんとなく」が春の情緒を言い得ていて、俳句では「春愁」の語で簡単に片付けてしまいそうなところをその本質にまで踏み込んで考えさせる句になりました。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』平成二十八年七月号)