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歳時記を旅する14〔青嵐〕前*すれちがひ待つ単線の青嵐
土生 重次
(平成五年作、『素足』)
「青嵐」は「青葉の頃に吹き渡る風で繁茂した草木を揺り動かす感じが主である。」(『合本俳句歳時記』角川書店刊)という。敢えて、俳人にとってはポピュラーなこの季語の解説を引用したのかというと、「草木を揺り動かす感じが主である」ところに注目したかったからである。「風」が主語ではないのである。……
これは或る句の重次の鑑賞文の一節である。遡って『増補俳諧歳時記栞草』(嘉永四年)にも「夏木立の梢の緑を吹きあらすをいふにや」とある。
青嵐の景には常に木々の青さ(緑)が視界にあることを意識しなければならない。
重次の句、山間の小駅だろうか、辺りの山の木々が躍動して、静かに停車する列車が緑に小さく溶け込んでいる。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』令和三年五月号)