
『ファンタスティック・フォー』の歴史と変遷 ~マーベル最古のヒーローチームの軌跡~
はじめに
ファンタスティック・フォーは、マーベル・コミックの歴史において特別な存在だ。1961年に誕生し、スーパーヒーローチームという概念を確立した。
コミックだけでなく、映画やアニメーションを通じて幾度も再解釈されてきたこのチームは、常に新しい世代のファンに影響を与え続けている。
ファンタスティック・フォーの歴史を年代ごとに振り返り、彼らの進化と映画化の試み、そして最新作についてまとめてみました。
※ネタバレを含みます。
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1961年:誕生と黄金時代

ファンタスティック・フォー(Fantastic Four)は、1961年にスタン・リーとジャック・カービーによって創造され、マーベル・コミックの最初のスーパーヒーローチームとして誕生した。
物語の始まりは、天才科学者リード・リチャーズ(ミスター・ファンタスティック)、恋人で後に妻となるスー・ストーム(インビジブル・ウーマン)、スーの弟ジョニー・ストーム(ヒューマン・トーチ)、そしてリードの親友ベン・グリム(ザ・シング)が、宇宙ミッション中に未知の宇宙線を浴び、特殊な能力を得るところから始まる。

引用:https://www.writeups.org/thing-fantastic-four-marvel-comics-1/
しかし、その代償としてベンは怪物のような外見になり、人間に戻ることができなくなってしまう。
ファンタスティック・フォーは、政府や社会に対して自分たちの力をどう使うべきか悩みながらも、世界を守るヒーローとして活動することを決意する。

Marvel Comics Group / Photofest / ゲッティ イメージズ
しかし、宿敵であるヴィクター・フォン・ドゥーム(ドクター・ドゥーム)との対決が彼らの運命を大きく変える。ドゥームはリードのかつての友人でありながら、嫉妬と野心によってダークサイドへと堕ちてしまう。
物語の中盤では、ギャラクタスの襲来により地球が危機に陥る。

ギャラクタス
シルバーサーファーが使者として現れるが、最終的に彼は地球を救うためにギャラクタスに反旗を翻す。ファンタスティック・フォーはこの戦いで多くの犠牲を払いながらも地球を守ることに成功する。
ファンタスティック・フォーの特徴は、単なるヒーローチームではなく、家族的な絆を持つことだ。彼らは正体を隠すことなく公に活動するヒーローとして描かれ、これがマーベルの他の作品に大きな影響を与えた。
1970~1980年代:コミックの進化と人気拡大

1970年代に入ると、クリエイターの変遷がありつつも、物語のスケールが拡大。特に、ギャラクタスやシルバーサーファーなど、宇宙規模のキャラクターとの対決が増え、ファンタスティック・フォーは地球だけでなく宇宙の守護者としての役割も強めた。
ギャラクタスは単なる敵ではなく、宇宙の秩序を保つために存在する超越的な存在として描かれ、彼との対決はファンタスティック・フォーにとって重要な試練となった。
この時期、シルバーサーファーはギャラクタスの使者として地球に現れるが、彼自身の葛藤が物語に深みを加えた。最終的に彼はギャラクタスに背き、地球を守るために戦うことを決意する。この戦いは、ファンタスティック・フォーが単なるヒーローではなく、宇宙の大いなる流れに関わる存在へと成長するきっかけとなった。
1980年代にはジョン・バーンが作画とストーリーを担当し、新たな魅力を加えた。

この時期、スー・ストームが単なる「インビジブル・ガール」から「インビジブル・ウーマン」へと成長し、チームのリーダーシップを発揮するようになった。彼女の能力も向上し、透明になるだけでなく強力なフォースフィールドを生み出せるようになり、チームの戦術的な要としての役割が強まった。
また、リードとスーの関係もより深く描かれ、家庭とヒーロー活動の両立がテーマとして扱われた。
1990~2000年代:アニメと実写映画化

1994年には低予算ながらも実写映画『ファンタスティック・フォー』が制作されたが、正式には公開されなかった。

この作品はファンの間でカルト的な人気を誇るものの、スタジオの意向で劇場公開は見送られた。

しかし、2005年に20世紀フォックスが正式な映画『ファンタスティック・フォー』を公開し、2007年には続編『ファンタスティック・フォー:銀河の危機』が登場。このシリーズは視覚効果やアクションシーンが話題になったが、ストーリー面での深みやキャラクターの描写に関しては意見が分かれた。

この映画では、リード・リチャーズ役にヨアン・グリフィズ、スー・ストーム役にジェシカ・アルバ、ジョニー・ストーム役にクリス・エヴァンス(後にキャプテン・アメリカを演じる)、ベン・グリム役にマイケル・チクリスがキャスティングされた。映画は興行的には成功し、特にクリス・エヴァンスの演技が高く評価された。

『銀河の危機』では、シルバーサーファーが登場し、ギャラクタスの使者として地球を訪れる。彼の圧倒的なパワーと複雑な背景がファンの関心を集めたが、ギャラクタスが巨大な雲のような形状で描かれたことに失望したファンも多かった。
また、原作の壮大なストーリーを2時間の映画に収めるのは難しく、展開が駆け足に感じられる点も批判の対象となった。
最終的に、このシリーズは3作目が制作されることなく終了し、その後2015年にリブートが試みられることとなる。
2010年代:リブートと試練

2015年、ジョシュ・トランク監督によるリブート版『ファンタスティック・フォー』が公開。
しかし、この作品は興行的にも批評的にも大きな失敗となり、ファンからも酷評を受けた。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とは異なる世界観で作られたことや、キャスト変更、脚本の問題が原因とされている。
特に、作品のトーンが従来のコミックの持つ冒険的な要素とはかけ離れ、暗くシリアスな雰囲気が強調されすぎたことが批判された。
また、登場キャラクターの背景が十分に描かれず、ファンタスティック・フォーのチームとしてのダイナミクスが薄かったことも問題視された。さらに、監督とスタジオ側の意見の対立が表面化し、撮影中に大幅なリシューが行われたことで作品の方向性がぶれてしまった。
結果として、興行収入は振るわず、続編の計画も白紙となった。
このリブート版の失敗は、ファンタスティック・フォーがMCUに統合される流れを加速させる要因となり、後のマーベル・スタジオによる新作の計画へとつながっていくこととなる。
2020年代:MCUへの復帰と新作

2019年、ディズニーが20世紀フォックスを買収したことで、ファンタスティック・フォーの権利がマーベル・スタジオに戻った。これにより、彼らは正式にMCUの一員として再登場することが決定。
最新作『ファンタスティック・フォー:ファースト・ステップ』は、2025年夏に公開。
監督は『ワンダヴィジョン』で高い評価を得たマット・シャクマンが務め、キャストにはペドロ・パスカル(リード・リチャーズ)、ヴァネッサ・カービー(スー・ストーム)、ジョセフ・クイン(ジョニー・ストーム)、エボン・モス=バクラック(ベン・グリム)といった豪華な顔ぶれが揃っている。
新作では、宇宙でのミッション中に特殊な力を得た4人が、宇宙最大の危機に立ち向かう姿が描かれる予定で、特報映像もすでに公開され、ファンの期待が高まっている。
小ネタ
映像の最後の方で4人が、矢印を模したセットかなんかに立っているところ。

これはビートルズがアメリカのTV番組『エド・サリヴァン・ショー』で演奏した時のオマージュ。

ファンタスティック・フォーのコミック界への登場とビートルズの音楽界への台頭はほぼ同じ。
F4=ファンタスティック・フォー(1961年)
FAB4=ビートルズ (デビュー:1963年)
カルチャーの歴史を変えた4人という意味で、ビートルズとファンタスティック・フォーは似たような存在。
ファンタスティック・フォーは、その長い歴史の中で幾度もリブートや再解釈が行われてきたが、常に革新的なストーリーテリングとキャラクターの深い人間性で読者や観客を魅了し続けている。最新作の成功が、彼らの新たな時代を切り開くことになるのか、2025年夏の公開が待ち遠しい。