実践することの難しさ
今日は人材育成とアドラー心理学について私見を述べたいと思います。
今まで多少遠慮がちにコメントを控えてきましたが、やはり実践の心理学であるアドラー心理学。日々の思いは記録する価値はあるかと思い、あえて大いなる批判に立ち向かう勇気を持って、自身の解釈を綴ります。
もくじ
1 面談
2 質問できず説得
3 退職する意味づけ
1 面談
管理職になると、学生指導も新人指導も含めて、全スタッフの面談を通じて、それぞれの思いを共有する場面が増えてきます。
臨床と同じで、ある程度回数を重ねると「できた風な感覚」に陥り、管理職としてそこそこいけてるんじゃないかと錯覚します。
自分の場合臨床場面、全くそうでした。今でもそうですね・・・
ふと気がつきます。臨床でもスタッフ面談でも・・・
あれ?予想と全然違う流れだ!結果も違う!これは?
初めのうちは、「まあ、こういう事もありえるよな!」なんて思ってます。自分で都合がいいように解釈を重ねます。
しかしどう考えても自分にとって都合が良すぎる解釈のみでは解決できない問題があると、今度は自分自身の問題に直面し、物凄く不安に感じたり、この間違いを修正するためにどうしたらいいのか必死になります。
管理職になると、職場では自分が一番上になったりすると、後輩に素直に聞けない時があったり、他の役職者も忙しくしているのを見ると、相談を投げかけたい時のタイミングがずれると後回しになって、ズルズルと先延ばしになり、このと問題が有耶無耶になってしまう事もあります。
完全に悪循環のループです。
あらためて実践する事の難しさに気付く毎日です。
2 質問できず説得
面談のでは実にいろいろな話題が提供されます。
転職・退職・患者のこと・実家のこと・兄弟のこと・・・
業務に関するシステム・対人関係・他部門関係・・・
自分自身のこと・進学について・学術的相談・・・
実に多種多様です。
面談者は、自分自身に経験があると、ついつい自分は・・・と自分の時のことを語り始めます。出来るだけ面談者に多く語ってもらおうと心に決めたはずなのに、気が付くと喋っている自分がそこにいます。
ふと我に帰り、あれ?いけない!いけない!と思い、軌道修正します。
質問を多くして、相談者の「自分自身と向き合う」きっかけを多く持ってもらおうとしてるはずなのに、ついつい自分が語っている。語るのみならず、なんか偉そうに説得しちゃっている自分に気がつく事もあります。
これではダメですよね・・・
自分は職業人として、過去に2度の大きな挫折感というか、人生についてこの意味を考えなくてはいけないと強く心を動かされた瞬間がありました。2度目の衝撃を経験したとき、アドラー心理学に出逢いました。
人生の挫折感も衝撃的でしたが、アドラー心理学に出会ったことはこれ以上に衝撃的だったかもしれません。そこから自分の研究が始まりましたから・・・
3 退職する意味づけ
この時期、面談での関心ごとは、退職に関してです。
面談者も相談者も少しナーバスになります。
相談者は「辞めたい・でも辞めたくないかも」の気持ちで揺れ動き、面談者は「辞めて欲しくない・でも本人が考えたことなら応援してあげたい!」の気持ちで揺れ動きます。
相談者のパターンとして大きく以下のようなパターンがあります。
A 先方からの引き抜き
B 自身で転職先訪問後
C とりあえず現場からの逃避
D 家庭の事情
私の場合、D以外は全て経験しました。
相談者のキャリアビジョンにおいて、現職より多職で経験を積んだ方が良い人生だと自覚できるのなら、これは退職を静止する余地はありません。
しかし、面談者(私の場合)が注意したいと考えていることは、相談者の退職理由が何なのかを注意深く質問して、相談者の気持ちに寄り添い、本音を語ってもらうことです。
中には頑に本音を言わない、もしくは言えない相談者もいて、場合に寄っては面談者を変更する必要があるケースもあります。
いずれにしても、「退職する意味づけ」については相談者と面談者で共有しなければなりません。
そして、この意味づけが相談者にとって本当に適切なのかを時間をかけて面談者が質問することが良いと感じています。
岸見一郎 NHK100分de名著 アドラー 人生の意味の心理学 NHK出版 2016
この本は、NHK100分de名著シリーズでアドラーが取り上げられた後に出版された本です。少し古くなってしまいましたが紹介いたします。
この本によれば
「今の自分が生きづらいのは、幼い頃に親の愛情が足りなかったからだ、とか、親から虐待を受けたからだ、と、過去に親から受けた教育を原因と考える人は少なくありません。しかし、過去の経験が私たちの何かを決定しているのはなく、私たちが過去の経験に、どのような意味を与えるか、によって自らの生を決定しているとアドラーは考えます。
」と示されています。
今この職場で自分が生きづらいのは・・・に置き換えます。
相談者は様々な視点で思いを語ってくれます。
これまで(現職で)の経験という過去の出来事において、どのような意味を与えているのか。これに着目すると面談者の理解も深まってくるのではないでしょうか。
私もこの部分には十分気をつけて、気を使って話を聞いている「つもり」になっていて、気が付くとつい語ってしまっています。反省です。
退職を引き止める場合、この現職での経験の意味づけが、仮にマイナスなら、プラスへと転換できないのか、そしてそれを現職でさらに継続して挑戦できないのか、などを共有してみるのも、自分自身に向き合う事の働きかけの一つになろうかと思います。
引き止める意味づけ、後押しする意味づけ、深く考えていくと面談者の面談技術は簡単なものではないことがわかります。
私はアドラー心理学に出逢い、心奪われ、人生が変わり、大きく感銘を受けた1人です。
学べば学ぶほど、実践する事の難しさに直面します。
難しいと考えている状態があるという事。
つまり十分に人と関わりを保てていないという事になろうかと思います。
アドラー心理学で有名なフレーズに「すべての悩みは対人関係の悩みである」これはこの本の中にも紹介されています。
人は人に傷つき、また人から愛情を受け取ります。
人間関係の中に入っていかなければ、喜びを感じることはありません。
療法士が患者さんと向き合い症例を重ねるが如く、管理者は面談という実践の場面を重ね、一人ひとりの考える「人生の意味づけ」を共に紐解いていけると、喜びを分かち合うことができるのではないかと考えます。
難しくしている実践する事の意味づけを考えないとなりません。
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