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カタカナの存在意義とその歴史
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ひらがなの歴史や成り立ちは各所で、何度も手厚く分厚く取り上げてきました。が、カタカナはまだ・・・ということで、カタカナの回です!!
昔の文字にも詳しいはずの書道家の面々も、カタカナの由来はあまり語りませんし、筆文字で書かれた有名なカタカナ作品も思い浮かびませんし、カタカナを書くことをメインにしている書道家の存在も聞いたことがありません。
でも、カタカナは現代日本語において漢字・ひらがなに次ぐ大事な文字。
カタカナ・・・ブルーオーシャン・・・?
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現代におけるカタカナの意義
現代におけるカタカナの役割を見ておきましょう。
①外来語を記述する
②オノマトペの一部を記述する
③動植物の学術名
④意味の分からない言葉を記述する
①外来語・外国語を記述する
「カステラ」「パン」「フランス」「ニューヨーク」「コミッション」「ギミック」など。現代ではおびただしい数の外来語・外国語があり、さらに日常いカタカナ語が増えている印象もありますね。
新サイトローンチは佐藤マターね。リードナーチャリング、プライオリティ高めにしっかりやって。それにクライアントのアポリスケしてフィックスしといて。あとさっきの議事録にエビデンスつけて、次回のアジェンダも作ってください!このプロジェクト、小林をアサインしてここまでのことシェアしといて!
実は外来語をカタカナ表記することが定着したのは明治期から。明治初期にはまだ、「カステラ」=「家主貞良」、「紐育」=「ニューヨーク」などと万葉仮名システムで漢字をあてていることも多くありました。
(しかも当て字の漢字は色々あった。漢字は主に行政文書や学問で使われる知識人のものだったため、多くの漢字を使える方がエライ的な感覚があったと思われる。)
明治中頃から、そして大正期・昭和期には、新しく入ってくる外来語に漢字の当て字をすることが無くなり、次第に「外来語=カタカナ」ということが定着していきました。
②オノマトペの一部を記述する
擬態語=ひらがな、擬音語=カタカナというのがルール。
〇もふもふ ×モフモフ 〇キーンと ×きーんと
へー!筆者は今初めて知りました。オノマトペって個人の感覚でひらがなとカタカナを使い分ければ良いと思っていました。
(擬音語)
犬が わんわん 吠える
犬が ワンワン 吠える
(擬音語)
拳銃を じゃきっと かまえた
拳銃を ジャキッと かまえた
(擬態語)
目には涙が きらきら 光っていた
目には涙が キラキラ 光っていた
この3例を見ても、ひらがなとカタカナで何となく受ける印象が異なる感じがあるのではないでしょうか。「きらきら」「キラキラ」は擬態語のため、「きらきら」が正しいのですが、「キラキラ」の方が出版物の実用例が多いなんて話もあります。
筆者のような疑問を持つ方も多く、擬態語=ひらがな、擬音語=カタカナというルールは、実情はゆるく運用され、国の議題にも上がっているようです。
審議の方向性は、基本的には芸術的な表現を規制する意図ではなく、報道などメディアにおいて表記を統一的にするということ。ルールが決まっていた方が当然ぱっと見も伝わりやすいし、誤解が生まれづらい、ということです。
※カタカナ表記ガイドライン(2015年)(文化庁掲載)
③動植物の学術名
蒲公英、たんぽぽ、タンポポ。
一つの花の種類をこのように書き分けることができます。
たんぽぽの場合は、漢字がやや難読のため、ひらがなかカタカナで書かれることが多いと思いますが、学名の場合は「キク科タンポポ属」と書きます。
動植物の学術名はカタカナ表記が決まりごととなっています。
④意味の分からない言葉を記述する
例えば「行燈」という言葉を知らない人は、「アンドン」とカタカナで表記するかもしれません。あるいは、誰かが「イパヒツヲアニフィフォ」と発していた場合、他の人には「イパヒツヲアニフィフォ」とカタカナで記述するのではないでしょうか。
カタカナには、意味の分からない言葉を記述する役割があるのです。
日本語は基本的には漢字ひらがな交じり文。カタカナは使われる頻度が低め。
機能としては、異種の言語であること、発音に注意すべきであることを示唆する役目があると言っても良いかもしれません。また見た目にも、漢字・ひらがなと一線を画し、読む際に目立つ存在になっています。
カタカナの起源
さてカタカナの起源に入る前に。簡単にひらがなの歴史をおさらいしておきます。
平仮名のはしりである「万葉仮名」が生まれたのが6~7世紀頃。万葉仮名は、漢字の音だけを借りて楷書体・行書体で書いていましたが、次第に書体がくずされ、「草仮名」→「平仮名」となっていきました。
7世紀頃・・・・・・・万葉仮名(楷書体・行書体)
8世紀後半-9世紀頃・・草仮名(草書体)
9世紀頃後半・・・・・平仮名
1900年以降・・・・・・現代のひらがな
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カタカナが生まれたのは、9世紀初期頃。万葉仮名から草仮名、平仮名へと移り変わっていく過渡期の頃、です。
僧侶が漢文の経典を読むために書き入れた訓点(原漢文に記入した文字・符号の総称)として生まれました。つまりは、漢文のフリガナ。
カタカナは、平安時代に漢文訓読の補助符号として成立した。
と言えます。(ただ平安時代のカタカナが書かれた資料を見つけることができず・・・現存するのは後世の写本ばかりです。)
これはあくまで一般説。朝鮮半島の新羅で8世紀頃には、カタカナ様のものが誕生しており、これを輸入したなどという説もあるようです。
ちなみに、下の画像はカタカナと漢字で書かれた珍しい古今和歌集の注釈本。通常はこういったものはひらがなと漢字で書かれることが多かったようです。
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カタカナは何から生まれたか
簡単に言うと、カタカナは漢字(万葉仮名)の一部と取って生まれたもの。
万葉仮名を省略して、先述のとおり、漢文の訓点として書き入れられたのが始まりと考えられています。
明治時代、1886年の子どもの教科書の一例では次のようにカタカナの字源が示されています。※カタカナ字源も諸説あり。
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下の図は筆者が作成していますが、『かなの成り立ち事典』を参照しており、上の『現今児童重宝記 開化実益』とは異なる字源のものもいくつかあります。
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カタカナは原則、漢字(万葉仮名)の一部と取って生まれた、のですが厳密に言うと次のように分けられます。
・漢字(万葉仮名)の全体を使って作られた
・漢字(万葉仮名)の一部を抜き出して作られた
・漢字(万葉仮名)の行書体/草書体(平仮名)の一部あるいは全体をさらに整えて作られた
・「ン」のみ例外、発音記号が元になっている
カタカナの「変体片仮名」「くずし字」
かつての平仮名は、一音につき複数の平仮名(「変体仮名」)が存在ました。
カタカナの異体字「変体片仮名」も少しは存在していたようですが、平仮名ほど数は多くありません。
時代によって書き方の差異や字源の説は色々あるものの、カタカナ黎明期から基本的にはほとんど一音一字と言って良いでしょう。
また、平仮名は一字においてもくずし加減の異なる複数の書き方がありましたが、カタカナはほとんどくずし字らしいものはありませんでした。
主に私的な手紙や書作品等に使われたひらがなは、「つづけ字」として速書きができ、遊びのためのバラエティがあった。
主に発音記号的に使われたカタカナは、比較的注意深く、明確に書く必要があった。
そんなふうに言えそうです。
漢字カタカナ交じり文
江戸時代後期~明治期にかけて、盛んに書かれたのが「漢字カタカナ交じり文」です。特に学問的な文章や公的な文書は漢字カタカナ交じり文で書かれました。
硬い文章が「漢字カタカナ交じり文」、軟らかい文章が「漢字平仮名交じり文」、というのが大まかな使い分けだったようです。
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日本語表記のざっくり変遷↓↓
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『寸松庵色紙』伝紀貫之筆)11世紀頃
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日本の中世文書WEB『後醍醐天皇自筆置文』1333年
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『萬寳料理秘密箱』1785年
漢字ひらがな交じり文へ
そして、戦後。GHQ指導の下、さまざまな改革がなされる中、文字の改革も行われました。
1946年(昭和21年)に発布された日本国憲法は漢字ひらがな交じり文で書かれました。それまで行政文書は威厳ある漢字カタカナ交じり文で書かれていたわけで、当時のお役人さんたちにはとても抵抗があったことでしょう。事実、原案の段階では漢字カタカナ交じり文だったそうです。
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これ、個人的に何だか得も言われぬ気持ちになる書…
※『日本国憲法』は1ページ目の天皇の記述と、内閣のサイン以降は活字となっています。
他にも、官報を見ると、1946年5月6日あたりから漢字ひらがな交じり文が見られるようになります。また当用漢字(新字体)の発布、現代仮名遣いの全面採用などがあった、現代の文字にとって重要な年と言えます。
その後、1952年には公文書において外国語・外来語を使う場合はカタカナを使用することという通達が出るなど、現代のカタカナ遣いとなっていきました。
いかがでしたでしょうか。
ひらがなのことは方々で語られても、カタカナってなかなか光が当たりづらい。筆者もようやく手を付けて、長年気になっていたことがスッキリしました。
「スッキリ」は擬態語だから「すっきり」か!!
でも「スッキリ」の方が「スッキリ」感あるような・・・?
これが日本語表記の豊かさ、こだわりどころとも言えるでしょう。
参考:かなの成り立ち事典 盛岡隆(著)2006年
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