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バルザック『人間喜劇』を楽しむための補助線
光文社古典新訳文庫の『ゴリオ爺さん』を読んだところ、巻末にフランス文学者の宮下志朗による解説がついており、それが人間喜劇を楽しむ補助線となるので紹介したい。""内が宮下志朗解説からの引用である。
まずは、『人間喜劇』の全体像について。"《人間喜劇》の文学空間は、九〇編近い長編・中編・短編で構成されていて(思想的エッセイも入っている)、その長さの合計は、プルースト『失われた時を求めて』の三倍にもなろうか。そこには、バルザックという天才が創造した、ひとつの確固たる世界観による小説空間が広がっている。"。
登場人物たちがまたがって作品に登場する「オールスターシステム」について。"同一人物を別の物語の時空間に浸入させることで、個別の作品=石がいくつも組み合わされて石垣となり、虚構空間は複雑にして、「巨大な建物」へと変容していく。「人物再登場」という手法を採用することで、諸作品を体系化する意志も強まったにちがいない。"。
登場人物たちの登場回数を数えた研究もあるらしい。"ところで、ある研究者が、おもしろい調査結果を発表している。《人間喜劇》の登場人物は全部で優に二〇〇〇人を超えると思われるが、「再登場」、つまり二つの作品に出現する人物が二六〇人もいるという。でも、これで驚くのはまだ早くて、三作品に登場する人物も一〇二人に上るというのだ。いやはや、いかに多くの登場人物が、文豪バルザックによって使い回されているかがよくわかる。"
光文社古典新訳文庫の『ゴリオ爺さん』はKindleUnlimitedで手軽に読めるのでオススメできる。