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変態と官能への苦手意識が変わった:『刺青』読了
谷崎潤一郎の『刺青』を読んだ。ネット上では彼を「変態」と呼ぶ声もよく見かけるから、今まで敬遠していた。でも実際に読んでみるとフェチ、女性に支配されたいという意味だった。個人的には、この作品は美しく官能的で好み。
あらすじ
腕利きの入れ墨彫師の男がいた。彼は理想の肌の女性に作品を彫りたい、という願望があった。何年も女性を探していたある日、乗り物の中からチラリと見える足首。彫師はその瞬間に、彼女こそ求めていた肌だと直感。数年後、その女性(少女)と再会し、少女の背中に女郎蜘蛛の入れ墨を彫るのだが…。
短編小説であり、20分もあれば読み終えることができる。私は下記の漫画で読んだから、イラストも美しくて物語がすんなり入ってきた。Kindle Unlimitedに加入している人は無料で読めるよ。
作品を通じて、私はエロティシズムと官能の違いを考えた。
個人的に思ったのは、胸やお尻で「性」を全面に出すのがエロなのかも。官能は、人が目をつけにくい場所から妖艶さを出すことなのかも。この作品なら足首がその象徴になっている。
私も変態だろうか。足首に惹かれるのは少し分かる。足首の形やラインに色っぽさを感じる。特に、ハイヒールを履いてキュッと締まった足首は魅力的。
感想
私が印象に残ったのは、入れ墨を彫る前後で、少女が変貌したこと。彫る前はあどけないピュアな「少女」だったのに、彫った後で「悪女」に変わった。
あどけない少女の背中に、無理やり入れ墨を彫る。私は性的な要素と支配欲を連想した。「無理やり」は犯罪だからダメ。入れ墨を彫るのが性行為。「俺が初めての相手だ」と言うかのように、背中に女郎蜘蛛を描く。彫師の支配欲を感じる。
私はオチが良かったと思う。彫師の内なる欲望は、支配欲とは真逆だった。女の最後のセリフがゾクゾクした。
背中は自分よりも、人の目に触れやすい場所だ。その無防備さが逆に官能的な魅力を放つと気がついた。
私も銭湯や温泉に行くと、キレイな背中の人に目を奪われることがある。アートを眺めるようにこっそり観察してしまう。無駄肉のない肩甲骨、背中の真ん中にシュッと入った縦線、丸みのある肩とウエスト部分は特に美しい。
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谷崎潤一郎の作品は、深い美意識や官能性が見え隠れしている。実際の生活での犯罪行為はいけない。でも作中の偏愛や自分自身の苦悩、人間の複雑な心情には共感することができる。
『痴人の愛』もおすすめ。私にはこの男女の考えが全く理解できないが、好きな人に振り回されて苦しむことはあるよなと思った。