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兼任させたら、人事評価はどうなる?
「メンバーに兼任をお願いしたものの、評価ってどうなるんだっけ?」
こんな悩みを抱えたことはありませんか?
兼任は組織にとってメリットが大きい一方で、評価を適切に設計しないと、本人のモチベーション低下や不公平感につながることもあります。
今回は「兼任者の努力を適切に評価するにはどうすればいいのか?」について考えてみます。
論点① 兼任業務の成果をどう測るのか?
兼任業務を任せると、どうしても「成果が測りづらい」という壁にぶつかります。
私も過去に、チームメンバーに兼任業務を抱えさせた際、成果をどう測るべきか悩んだ経験がありますが、自分が把握していない業務の進捗や努力を正確に評価するのは、非常に難しく感じたものです。
そのとき、改めて重要だと思ったのは「目標を明確にすること」です。当たり前ではあるのですが、意外にも漏れがちです。
というのも、兼任業務は通常の業務とは異なる理由で任せることが多く、任せる側も、任される側もやや手を抜きがちになることがあります。しかし、半端な仕事の任せ方は誰も幸せにはなりません。兼任業務であっても、目標設定を甘くせず、成果物や達成基準を具体的に定め、「何を達成すれば成功なのか」をはっきりと示すことが大切です。
次に大事なのは「定量と定性のバランスを取ること」です。
兼任業務は、しばしば通常の業務にはしづらいプロジェクトを任せることが多く、そのため定性的な評価に偏りがちです。しかし、それだけでは成果が評価しづらくなります。しっかりと定量・定性の両面のバランスを取った成果指標を用いることが不可欠だと感じています。
最後に、意外と見落とされがちなのが「フィードバック情報を活用すること」です。
兼任業務は、他のメンバーや上司が関わることが多いため、自分一人で評価するのが難しいこともあります。特に直属上司(本業業務の上司)にとっては、兼任業務の内容を十分に把握していないことが多く、その状態で評価しなければならないことがしばしばあります。
そのときポイントになるのが、周囲からのフィードバック情報を活用することです。兼任業務の状況がわからないのであれば、兼任業務に関わった他のメンバーや関係者からの意見を定期的に収集することが、結果的に進捗状況や成果、貢献度を客観的に把握することにつながります。
こうして見ると、実は兼任業務だからといって特別な評価方法を導入する必要はありません。
大切なのは、目標をしっかりと明確にし、数値と定性的な評価をバランスよく組み合わせ、他者のフィードバックを活用することです。このアプローチにより、成果がより正確に評価され、適切な対応が可能になると実感しています。
論点② 主業務と兼任業務、どのように重みづけるべきか?
次に課題となるのは、主業務と兼任業務の評価の重みづけです。
それぞれの重みは、どのように設定するのが適切なのでしょうか。
まず、会社の目標達成に直結する主業務は、評価の中心とすべきです。売上、プロジェクトの進捗、品質向上などの要素に対して、重要度や業務時間配分などを考慮し、全体評価の7割から9割程度の比重を持たせ、成果や業績への貢献をしっかりと測ることが望ましいと考えます。
一方で、兼任業務は組織の成長や横断的な価値創出に貢献するものの、主業務ほど直接的な成果に結びつきにくい傾向があります。そのため、1割から3割程度の比重を設定し、影響範囲や継続性を基準に評価するのが適切です。
例えば、新規事業開発や全社的なプロジェクトのように、組織全体にインパクトを与える業務には1.5割から2割の比重を持たせてもよいでしょう。一方で、社内勉強会の運営やイベントのサポートといった補助的な業務については、0.5割から1割程度の評価が適切ではないでしょうか。
ここで問題となるのが、「兼任マネジャー」の場合です。マネジャーとしての主業務を続けながら、プレイヤー業務を兼任するケースは多くあります。
しかし、プレイヤーもマネジャーも単なる追加業務ではなく、チームの成長や成果に責任を持つ重要な役割です。そのため、「兼任業務だから評価の比重を軽くする」という考え方は適切ではありません。
もしマネジメント業務をメインとする場合は、評価の7割から8割を主業務に置き、プレイヤー業務には2割から3割を割り当てるのが現実的なバランスといえます。一方で、プレイヤー業務の比重が高まる場合は、主業務の比重を下げ、適切に評価することが重要です。
大切なのは、業務の性質や個々の役割の重要性を適切に反映させ、評価が公平かつ透明であることです。主業務と兼任業務のバランスを意識しながら、それぞれの貢献度を正確に測ることが大事だと考えます。
論点③ 兼任者自身の納得感をどう醸成するのか?
兼任者に限らず、人事評価において最も重要なのは、評価に納得し、前向きに受け止められることです。
どんなに客観的で公平な評価基準を設けても、被評価者がどう受け止めるかで変わってきます。
特に、兼任者の場合、会社から求められて兼任業務に尽力しているにもかかわらず、その努力が十分に評価されていないと感じた場合、モチベーションが下がるのは目に見えています。
だからと言って、評価を甘くするわけにもいきません。いかに基準を設けて厳格に運用しながら、兼任者の納得感を高めるための工夫が不可欠です。
そのときにポイントになるのが、評価基準を事前に本人とすり合わせることが不可欠です。
どのような成果が求められているのか、業務のどの部分が評価対象になるのかを明確にし、事前に共通認識を持つことで、不安や不信感を減らすことができます。
言われれば当たり前なのですが、やはり評価のタイミングになって初めて基準を説明するのではなく、業務開始時点で納得のいく形で基準を共有することが、評価への満足度を高めるポイントになります。
また、定期的に進捗を確認し、負担感や成長実感について話し合うことも重要です。
兼任業務が始まった初期段階から、兼任者がどのように感じているのかを確認し、負担の大きさや困難な点を早めに把握することで、適切なサポートが可能になります。
また、単に業務の進捗を確認するだけでなく、兼任業務を通じてどのように成長できているのかをフィードバックすることも大切です。
自分の努力がどのように評価され、どのスキルが伸びているのかを具体的に伝えることが大切だと考えます。
最後に、評価結果のフィードバックを丁寧に行うことが欠かせません。
特に兼任者の場合、期待した成果が正しく評価に反映されていないと感じることもあるため、単に評価を伝えるのではなく、どの点が評価されたのか、どの部分を改善すればより高い評価につながるのかを具体的に伝えることが重要だと考えます。
フィードバックが具体的であればあるほど、次のステップが明確になり、兼任者自身も納得感を得やすくなります。
このように、兼任者の納得感を大切にするためには、評価基準の明確化、定期的な対話、そして丁寧なフィードバックが欠かせません。こう見ると、この論点も通常の人事評価のときと変わりなく、原則をしっかり理解し、徹底することが大事だと言えそうです。
【兼任させたら、人事評価はどうなる?】
— 太田昂志|ゆめみCHRO (@oh1ta) February 18, 2025
「メンバーに兼任をお願いしたものの、評価ってどうなるんだっけ?」
こんな悩みを抱えたことはありませんか?
兼任は組織にとってメリットが大きい一方で、評価を適切に設計しないと、本人のモチベーション低下や不公平感につながることもあります。…