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心理的安全性、いったい誰が最初に言い出した?

いまや「心理的安全性」という言葉は広く知られるようになり、職場におけるも重要なキーワードとなっています。

心理的安全性を確保することが、組織の成功に欠かせないという点に異論は少ないでしょう。

とはいえ、この概念がどのように生まれ、誰が最初に提唱したのかと問われると、明確に答えられる人は意外に少ないかもしれません。

いったい、誰が最初に言い出した概念なのか。「心理的安全性」という概念のルーツを見てみたいと思います。




言い出しっぺは、あの有名な〇〇と〇〇?


「心理的安全性」という概念を最初に提唱したと言われているのが、エドガー・H・シャイン氏とウォーレン・ベニス氏の二人です*1。

シャイン氏は「組織文化」や「キャリア・アンカー」などの概念を構築したことで知られ、組織心理学の父とも呼ばれる心理学者です。一方、ベニス氏はリーダーシップ研究の第一人者として知られる経営学者で、彼が提唱したリーダーシップ理論は多くの人々に影響を与えています。

シャイン氏とベニス氏は、1965年の研究の中で「自分は変われる」と個人が安心して感じるためには、心理的安全性を作り出す必要があると述べました*1。この研究をきっかけに、心理的安全性の研究が始まったのです。


心理的安全性は、エンゲージメントと結びついてさらに発展


その後、しばらく時間が経ってから、心理的安全性を再び注目する研究が現れました。それが1990年のことです*2。

再度、心理的安全性に注目したのが、心理学者のウェイリアム・カーン氏です。カーン氏はエンゲージメント研究でも知られる著名な学者ですが、心理的安全性が職場でのエンゲージメントを促進することを示し、この概念に再び光を当てました。

カーン氏は心理的安全性を「自己イメージや地位、キャリアへの悪影響を恐れることなく、自分自身を表現したり、利用したりできること」と定義しました。

シャイン氏とベニス氏が心理的安全性を個人変容のために必要だと論じたのに対し、カーン氏はこれを個人が自分らしさを安心して表現できる環境として定義を拡張したのです。


現代の「心理的安全性」を形作ったのはエイミー・C・エドモンドソン氏


シャイン氏やベニス氏、そして後にこのテーマを扱ったカーン氏の研究は、いずれも「個人」における心理的安全性に焦点を当てていました。

しかし、現在広く議論されている「心理的安全性」は、個人ではなく 「チーム」 におけるものを指しています。

では、この概念をチームの文脈へと発展させたのは誰だったのでしょうか。

その答えが、ハーバード・ビジネス・スクールの経営学者 エイミー・C・エドモンドソン氏です。1999年に、今の「心理的安全性」の概念の初めて提唱したとされています*3。

そのきっかけになったのが、エドモンドソン氏が博士課程の研究者だった頃*4。病院におけるチームワークの質とヒューマンエラー率の関係について調査を行っていました。

当初はチームワークが優れているチームほど、ヒューマンエラー率が低いと考えられていたにも関わらず、結果は予想に反するものでした。というのも、 チームワークが優れているチームほど、実はヒューマンエラー率が高かったのです。

その理由を探ったところ、優れたチームほどメンバーがオープンに情報を共有し、エラーを率直に報告していたためだと判明しました。

ヒューマンエラーという言葉はネガティブな印象を与えがちですが、本当に健全なチームは、物事が必ずしもうまくいかないことを理解しているものです。そのため、エラーを恐れずに共有し、結果的にエラーが表に出る回数が増えていたというわけなのです。

エドモンドソン氏は、この現象を 「チームの心理的安全性」 と名付け、今の「心理的安全性」の概念の核となります。今やこの概念は、効果的で信頼できるチームを作るための鍵として注目を集め、世界中の組織や研究者に大きな影響を与えています。


(参考情報)
*1 Schein, Edgar H., and Warren Bennis (1965) Personal and Organizational Change via Group Methods. New York:Wiley.

*2 Kahn, W. A. (1990). Psychological conditions of personal engagement and disengagement at work. Academy of Management Journal, 33, 692-724.

*3 Edmondson, A. C. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383.

*4 「エイミーエドモンドソンが明かす、心理的安全性と内発的動機の相互関係」https://www.attuned.ai/jp-blog/amy-edmondson-on-psychological-safety-amp-intrinsic-motivationnbsp-d4p6e(2024年11月30日アクセス)

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