最初の4分だけ頑張れば上手くいく、は本当か?ーー「ズーニンの法則」
「ズーニンの法則」を聞いたことがありますか?
何かに取り組むとき、最初の4分間だけグッとこらえて頑張ると、その後は上手くいくという法則です。米医師、レナード・ズーニン(Leonard M. Zunin)氏が提唱しました。
この法則は、仕事、勉強、運動など、まるですべてに当てはまるかのように語られていますが、その根拠は何なのでしょうか?
そもそも、レナード・ズーニン氏は何者か?
国内の「ズーニンの法則」を扱ったコラムや記事を見ると、ズーニン氏はたびたび"心理学者"として紹介されています。こうした紹介を見ると、ズーニン氏は大学などで教授職に就き、いかにも科学的な裏付けのもとでこの法則を打ち出したように見えます。
しかし、米国におけるズーニン氏の位置づけは、いわゆる大学に所属する研究者や学者ではありません。次に示すプロフィールを見るとお分かりの通り、現場での実践を重視する医師やコンサルタントとして紹介されています。
こうしたバックグラウンドを踏まえると、ズーニン氏は学者・研究者というよりも実践家として捉え、彼の提唱する「ズーニンの法則」も普遍の真理というよりも、ひとつの考え方として受け止めた方が良さそうです。
ズーニン氏の著作を見ると、どんなことが書かれているか?
ところで、「ズーニンの法則」に関する疑問点のひとつは、その主張がどの論文や著作に基づいているのかがはっきりしていないことです。その内容はもちろん、根拠自体も確かなものが提示されておらず、その信頼性に疑問が残ります
さて、この疑問を解消するためのひとつ手がかりになるのが、ズーニン氏が著したベストセラー『Contact: The First Four Minutes』です。
この本には何が書かれているのでしょうか。
本書が主張することのひとつは、人が友達になるかどうかは、初対面の関わり合いで決まるということです。具体的には、お互いが興味を示さない限り、その関係性は発展しないとされており、それが最初の4分間で決まるとされています。
ズーニン氏が著した著作物をすべて調べたわけではありませんが、どうもこの著作の「4分間」という数字が拡大解釈され、「ズーニンの法則」として出回った可能性があるかもしれません。
「ズーニンの法則」は嘘か本当か?
ここまでの議論の結論として、国内で紹介されている「ズーニンの法則」はその根拠が乏しいということがわかりました。
ただ、たしかに「4分間」という数字の根拠に疑念は残るものの、「初動が成功すれば、その後の物事が順調に進む」という経験則自体は多くの人が共感することでしょう。
これに関しては、講演家・著述家として知られるリタ・エメット(Rita Emmett)氏も「エメットの法則」として同様のことを述べています。
また、この「初動が大事」という点について、「やる気」の観点から捉えると、脳科学的に説明できる側面があります。
脳には「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる部位が存在し、この側坐核を刺激することで「やる気」が高まるとされています。「作業興奮」と呼ばれますが、側坐核が刺激されるとドーパミンが分泌され、「やる気」が湧いてくるのです。
この作用が発生するまでの時間は具体的にはわかりませんが、一定時間、辛抱強く作業を続けると、後からやる気が高まってくるというわけです。こう考えると、「ズーニンの法則」も全くの嘘ではないと言えそうです。
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