「人的資源管理」、いつから言われ始めた?
人事の現場でたびたび耳にする「人的資源管理」。この概念が登場したのは、意外にも最近のことです。
一体、いつから「人的資源管理」と呼ばれるようになり、そこにはどんな背景があったのでしょうか?
1980年代に広まった人的資源管理の起源
人的資源管理という考え方が広まったのは、1980年代のことです。
「人的資源管理」以前は、いかに人材を使用し、組織を効率的に運営するかに重きを置いた組織が多数を占めていました。すなわち、誤解を恐れずに言えば、人は単なる部品と見なされ、合理的に決められた仕事をこなしてもらえさえすれば問題なかったのです。
しかし、1990年代以降、欧米の製造業がグローバル競争のなかで競争力を失い始めました。その背景にあったのは、"日本的経営" "三種の神器"という言葉に代表されるように、人材の活用力に特徴を持つ日本企業の台頭です。
その経営のあり方では、人材を企業の重要な資源と捉え、経営戦略と連動させて管理・活用するという考え方がありました。
こうした反省を踏まえ、「ヒト」も貴重な経営資源として捉え、適切に管理・開発する動きが広まりました。
「人的資源管理」を代表する5つの理論・モデル
では、こうした「人的資源管理」について、具体的にどのようなモデルが存在するのでしょうか。代表的な5つの理論・モデルを見てみましょう。
まずは「ミシガンモデル(Michigan Model)」です。1980年代に米国ミシガン大学で行われた研究に基づくモデルで、企業の経営戦略に合わせた「人的資源管理」を提案しています。このモデルでは、「採用と選抜」「人材評価」「人材開発」「報酬」の4つの機能を組み合わせ、効果的な仕組みや体制を構築して、パフォーマンスを向上させることを狙いとしています。
次いで「ハーバードモデル(Harvard Model)」です。1980年代に米国ハーバード大学での研究に基づくもので、「人的資源管理」の領域を「従業員への影響」「人的資源のフロー」「報酬システム」「職務システム」を組み合わせ、総合的に捉えるものです。
「AMO理論(Ability-Motivation-Opportunity Theory)」は、「Ability(能力)」「Motivation(モチベーション)」「Opportunity(機会)」の3つの要素を向上させることで、組織の競争優位性を高めるとするモデルです。これら3つの要素が相互に影響し、結果として生産性や成果が向上するとされています。
「PIRK理論((Person-Organization Fit, Person-Job Fit, Person-Group Fit)」は、「権限の委譲(Power)」「情報の共有(Information)」「公平な報酬(Reward)」「社員に帰属する知識(Knowledge)」の4つの要素からなるモデルで、これらの要素を最適化することで組織の機能を向上させることを目指しています。
最後は「タレントマネジメント(Talent Management)」です。従業員のタレント(才能、素質)を経営資源として重要視し、経営目標達成のために最大限に活用するマネジメント手法です。従業員の個々の能力やポテンシャルを最大限に引き出すために、リーダーシップ開発やキャリア開発なども取り組むことで、組織の競争力向上に寄与することが期待されています。
これらのモデルは組織成長にとって非常に役立つ考え方ですが、あくまで一般解であることを忘れてはいけません。
実際の適用には、皆さんが属する組織の特性や状況を考慮する必要があるでしょう。人事としては、現状に対して適宜これらの考え方を参考にしながら、人的資源を最大限に活用して競争優位性を築くことが重要です。
(参考情報)
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