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『青嵐の旅人』「包帯クラブ」「悼む人」が時代劇になって帰ってきた

天童ワールド全開!読者を惹き込む叙述の魔術

久々の天童荒太作品『青嵐の旅人』
ページをめくる手が止まらない、
そんな読書体験を約束してくれる一冊だ。

主人公ヒスイの凛とした姿が目に浮かぶ。
その静かで強い眼差し、まっすぐな背骨。
包帯を持った強い意志は、
「包帯クラブ」のワラやディノも思い出す。

天童氏は、登場人物の内面を丹念に描き出し、
読者に鮮やかな映像を見せる。

まるで映画を観ているかのような臨場感だ。

ヒスイを追いかけるうちに、
時代は幕末へ、
舞台は伊予から京都へと移り変わり、
読者は息もつかせぬ歴史の渦に巻き込まれていく。

本作は、坂本龍馬のスピンオフ物語でもある。

天童氏ならではの視点で描かれる龍馬は、
どこか人間臭く、隙もあり、身近に感じられる。

その独特の言葉選びとリズム感は、
日常的な言葉の中に、ときにユーモア、ときに切なさ、
そして時に激しい感情が込められている。

その激情はまるで2024年の現在の世界、
日本の事を話しているかのようでもある。

そんな登場人物たちの心の動きを繊細に描き出し、
喜怒哀楽、様々な感情が複雑に絡み合い、
読者の心を揺さぶる。

特に、ヒスイ、救吉、
幼馴染の周囲の仲間が、
時代に巻き込まれていく正義、葛藤、無念さは、
本作の見どころの一つだ。

独特の世界観と魅力的な登場人物たち。

歴史小説でありながら、エンターテイメントとしても楽しめる本作は、一度読み始めたら、きっと最後まで一気に読んでしまうだろう。

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