【読書】「超」入門 失敗の本質(ダイヤモンド社)
社会人として働く中で、恐らく多くの方が「上司は〜」「ウチの部署は〜」「会社の方針が〜」といった「人と人との関係性や、組織としてのあるべき姿」について考えたり、悩んだりしたことがあるのではないでしょうか。
私もそうでした(今もそうです…)。
本書には、その「答え」が明確に書かれているわけではありませんが、そうした経験がある方にとっては、非常に共感し、課題に対する頭の整理に役立つ内容となっています。
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本書についてのざっくり説明
本書は、1991年に出版された「失敗の本質」という本の入門書にあたります。
「失敗の本質」は第二次世界大戦における、旧日本軍の敗戦要因を分析した本であり、こちらも長きに渡って組織論の名著と言われてきた本になります。しかしながら、やや難解であるということと、現代を生きる人々にとって実社会でのビジネス応用が浮かびにくいという難点がありました。
そこで本書では、現代社会の組織課題(会社やプロジェクト体制、上司部下関係など)についてのより良いカタチについて、原著を基に23のエッセンスとして非常に平易な文章で解説されています。
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以下では、私が共感ポイント、および私の日々の仕事に照らし合わせた際に考えたことについて述べます。
共感ポイント①
「体験的学習」で一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。指標を理解していない勝利は継続できない。
例えば、営業で受注できた際に、「何が決め手になったのか?他のお客様にも共通することなのか?他の担当者でも再現できるのか?今後も通用するのか?」と、起こった結果について様々な角度から検証する姿勢が大切だと思います。一過性の成功に留まったり、偏ったノウハウの展開や、不適切なKPIの設定に繋げないためにも、結果の周辺状況も踏まえた上で、その事象が発生した本質を理解することの重要性を改めて感じました。
共感ポイント②
一人の個人が行うイノベーションでさえも、組織の意識構造によって生み出されるか、潰されるかが左右される。「型の伝承」から離れ、「勝利の本質」を伝承する組織になることで初めて、所属するすべての人間が変化への勝利に邁進できる集団となる。
人間はどうしても一度の成功や安定に囚われがちです。個人でも過去の栄光に浸る人は多いですが、弊社も例に漏れず、企業でも一度成功(特に大成功)したビジネスモデルから中々脱却できない所も多いです。しかし、今は猛烈な技術の進歩(特にIT分野)に伴い、過去トップランナーであった大企業が、その5年後には後塵を拝する、はたまた倒産というのもよくある世の中になってきました。この変化の目まぐるしい時代の中では、過去の叡智や経験と最新の技術やビジネスを融合し、新たな時代を切り開いていかなければなりません。そのためには、個の尊重がより大きな鍵を握ると思っています。よく言われる「若者・女性の意見」だけではなく、等しく個が尊重される場作り(心理的安全の確保)にこそ、組織は特に力を入れる必要があると感じました。
共感ポイント③
組織の階層を伝ってトップに届く情報は、フィルタリングされ担当者の恣意的な脚色、都合の良い部分などが強調されていることが多い。問題意識の強さから、優れたアンテナを持つトップは激戦地(利益の最前線)を常に自らの目と耳で確認すべき。
大企業の様に超多段のピラミッド構造になっている組織(私の前職然り)、は、特に報連相において長い伝言ゲームになりがちです。その長いプロセスの中では、場合によって元の情報とは真逆の印象で伝わることも多々あります。得てして、こうした組織の上層にいる人は下から上がってくる情報を待って受けるだけになりがちですが、ただ、偏った情報を鵜呑みにして下した決断は、大企業であればあるほど事業や社会に対する影響も大きく、場合によっては取り返しがつかなくなる可能性もあります。なので、そうした立場に立った時こそ、定期的に現場のリアルを自らで確かめ、情報の真偽についても自らの独立した判断軸を持つことが重要だと感じました。刑事ドラマの言葉を引用すれば「現場百遍」「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ」という意識を、私自身より強く持とうと思いました。
共感ポイント④
リスクは「目を背けるもの」でも「隠す」ものでもなく、周知させることで具体的に管理されるべきもの。ビジネスでは、リスクを「かわす」のではなく、徹底して管理しなければ、存続していくこと自体が難しくなる。
「リスクをいち早く認識し、適切かつ確実に対応をする」のは、組織が持続的な発展を遂げるためには必須のスタンスだと思います。そして、そのためにより重要になるのが、コミュニケーションのフラットさではないかと感じます。例えばチームで仕事をする時、誰か1人がリスクについて気づいたとしてもそれを言える環境に無ければ、それは気づいていないことと同じになります。
私がかつて所属したチームでは、「対案の無いネガティブな意見は禁止」というルールがありました。勿論、何でもかんでも無責任に批判してばかりの批評家スタンスは前進を疎外するので良くないと思います。しかし一方で、仮に証拠も対案も無い、ただの個人的な予感的なものであったとしても、将来的なリスク要因として管理する必要があるのではないでしょうか(私自身、かつて予感的なリスク仮説を放っておいたことによる実害を被った経験があります)。もし、人がモノやサービスに対してお金を払うか否かは、結局のところそれに価値を感じてお金を払いたくなるか否か(突き詰めると感情的な要因)に帰着するのだとすれば、「何かおかしい」「心が揺れ動かない」といった「感覚」を大切にし、それらの発生要因を具に見ていくことが選ばれ続けるモノやサービスをつくる上でとても重要なことだと感じます。
「個々が常に内外の状況に目を配りつつ、相互で尊重し合うフラットなコミュニケーションが取れる雰囲気や体制を保つこと」がリスクを管理し、組織や事業を持続的に発展させるために、より重要なことなのではないかと感じました。
臭いものに蓋をしたくなるのは人間の性なのかもしれませんが、ビジネスにおいては、臭いものほど顔を突っ込むべきことではないかと思っています。皆が難しいと思っており、でもそれがいつかは解決しなければならない課題だからこそ認知はされ続けている、そんな課題こそ解決することに多大な価値があるのではないかと思うので、臭いものを見つけた時こそ是非チャンスと捉えて知恵を絞ってみようと改めて思いました。
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以上、本書の中のごく一部についてピックアップし、考えたことを述べてみました。振り返って見てみると、当たり前なことを偉そうに意識高そうな綺麗事としてツラツラ書いているな…と思える内容になってしまいましたが、改めて自分の中で意識すべきこととして日々に活かしたいと思います。
本書はページ数も少なく、サクッと読める本なので、もし「組織はどうあるべきか」というテーマについて気になられた方にはお読みになってはいかがでしょうか。
駄文で恐縮です。お付き合いいただきありがとうございました。