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ゴールディーのお人形
両親が残した人形を作る仕事を続けながら、ひとりで暮らす女の子ゴールディー。人形を作るときはいつも、四角く切られた木っ端ではなく、森で拾った枝を使っています。それじゃないと「生きている」感じがしないからです。ただの人形、と友だちのオームスに笑われてもひとつひとつに心をこめて、ていねいに仕事をしています。
そんなある日、お気に入りの店で、ゴールディーは今までに見たこともないほど美しい中国製のランプを見つけます。そしてすばらしい出会いをすることになるのです。
この本をおすすめしたい人
・物語をもって物作りされている方
・頑張っている何かに行き詰まったとき
・丁寧に生きる方への贈りものに
おすすめの読み方
想いを持って何かに取り組んでいたはずなのに、ふと立ち止まってしまう。
そういう瞬間ってありませんか?
「進むのは、この道で正しいのかな?」
「今やっていることは、無駄じゃない?」
今日ご紹介するのは、そんなふうに感じた時にこそ、開いてほしい絵本。
シンプルな文章に合わせて数ページごとに挿絵も添えられているので、本を読みなれていない方もきっと、すんなりお話の世界へ入っていけると思います。
本の装丁やデザインも洗練されていて、紙そのものも触れていて心地が良いから、贈りものにもお勧め。
今の自分に少し客観的になれて、前を向いて丁寧に生きようと思える、そんな1冊です。
感想
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「美しさを感じるものに、お金を使えること」
その豊かさに、あらためて気付かせてくれる物語でした。
個人的な話になりますが、わたしは現在、イラストレーターとして活動していて。
作品にお金をいただくとき、これまでに幾度も、そのお相手に憧れの気持ちを抱いてきたんです。
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それは、絵やほかの芸術、だれかの手仕事にお金を使える人はみな、心があたたかく美しくて、豊かな人生の物語を持っているように感じるからです。
この本にあらためて、その感覚を確信に変えてもらいました。
先が見えない世の中で、コスパの良いものが注目されがちだけど、こんな世の中だからこそ、想いを持って作られたり、育てられているものたちに、わたしもできる限り、お金を使っていきたいな。
読んでいて、そんなことを考えさせられる本でした。
本著の中では、物作りを生業にする人、それを購入する人がそれぞれ登場します。
こだわりを持ち、丁寧にコツコツと、物作りに励む作家さん。
彼らの姿勢には、わたし自身、共感できることが多かったです。
たとえば、登場人物のひとりが口にしたある台詞があります。
「私は、会ったこともないあなたのために作ったのです。どこかの誰かが、きっと気に入ってくれると信じて、一生懸命作ったのです」
オーダーメイド作品はともかく、オリジナルグッズを作るときは、実際にどなたかが手にとってくれる日まで、基本的にはわたし達にお客さんの顔は見えません。
だけど、その状態では作品に心が入っていかない感じがするから、わたしはいつも、それを喜んで使ってくれている誰かを想像しながら、作品作りをします。
だから、このセリフには思わず、うんうんそうだよね、と頷いてしまいました。
作り手としても、それを観たり購入する側としても、感じることがいっぱいの物語でした。
実はこの絵本、文も絵も、同じ方が書かれているんですよね。
絵本作家であり、その前は画家としても活動されていたM.B. ゴフスタインさん。
もしかしたら、作品を作って生きられている方だからこそ、こういう視点での物語が描けたのかもしれないですね。
彼女は本著の最後に
「私が本の中で表現したいと思っていることは、自分が信じるすばらしい何かのために黙々と働く人の美しさと尊さです。」
と語っています。
言葉通りのそれが、表現されている絵本でした。
物作りを通して働いていたり、また、そうでなくてもポリシーを持って働いている、友人たちに勧めたいなって思います。
そしてわたしも、彼女の描く他の物語にもたくさん触れて、もっともっと心を持って活動していきたいです。
まだ会ったこともない誰かに、きっと気に入ってもらえる、そんな作品を作っていけるように。