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【整形外科専門医が解説】頚椎症について

頚椎症とは?

背骨は医学的には脊椎と呼び、首の骨(頚椎)が7個、背中の骨(胸椎)が12個、腰の骨(腰椎)が5個、縦に重なっています。

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そして、その骨と骨の間には椎間板という円板状の組織があります。

椎間板は加齢とともに摩耗して薄くなっていき、
骨と骨の間が狭くなります。
それに伴って以下のような所見が出現します。

骨硬化(骨がカチコチに硬くなる)
骨棘形成(骨の出っ張りが出現する)
靭帯肥厚・骨化(靭帯が分厚くなったり、骨に置き換わる)


その所見が頚椎に生じ、肩こり、首の痛み、首の動かしづらさなどが出現した状態を頚椎症(変形性頚椎症)と呼びます。

加齢に伴う変化ですので中高年に多い疾患です。

頚椎症だけでは首・肩の症状に限られるのですが、
頚椎症に由来する頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症はその他の症状も出現します。

頚椎症性神経根症とは?

頚椎症による前述の変化によって、脊髄から枝分かれした神経(=神経根)が圧迫され上肢の痛みやしびれが出現する疾患です。

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                        引用:日本整形外科学会

頚椎症性脊髄症とは?

頚椎症による前述の変化によって、脊髄が圧迫され上下肢の運動障害が出現する疾患です。

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                        引用:日本整形外科学会

頚椎症性神経根症・脊髄症の症状は?

肩こり、首の痛み、首の動かしづらさといった頚椎症の症状に加え、以下の症状が出現します。

<神経根症>

腕のしびれ
腕に広がる痛み(放散痛)
腕の感覚異常
腕の感覚の鈍さ
腕の脱力(麻痺)


<脊髄症>

箸が使いにくい、ボタンがかけにくいなどの手先の細かな運動の障害(巧緻運動障害)
膝が伸びたまま脚が突っ張ったような歩行(痙性歩行)
神経の障害によって尿失禁したり、尿がうまく出せない(神経因性膀胱)

頚椎症性神経根症・脊髄症の診断は?

レントゲンやCTにて前述の頚椎症による変化を確認し、
MRIにて神経根や脊髄の圧迫を確認します。

頚椎症性神経根症・脊髄症の治療は?

まずは保存療法を選択しますが、
保存療法の効果がない場合や麻痺が進行する場合などは手術療法を選択することもあります。

<保存療法>

以下の方法にて、6~8週間程度症状の経過をみることが一般的です。

安静(頚椎の安静を目的に頚椎カラーを装着する)
(鎮痛剤や筋弛緩剤など、その他神経痛に有効な薬もあり)
頚椎牽引(適切な方向へ首を引っ張ることで痛みが軽減する)
温熱療法(頚部を温めることで痛みが軽減する)
ブロック注射(神経根症の場合は有効)


<手術療法>
神経の通り道をひろげて、神経の圧迫を解除する手術(除圧術)が行われます。

特に、首の後ろから骨を削って神経の通り道をひろげる椎弓形成術とよばれる後方除圧術が日本ではよく行われています。

手術時間は比較的短時間ですみ、合併症も少ないですが、
術後に首の痛みが出現しやすいという難点もあります。

また、首の前から、神経を圧迫している部位を直接切除する前方除圧術という方法もあります。

圧迫部位を切除した後は骨を移植し、金属で固定する必要があるため、
手術時間が長くなり、身体への負担も大きくなりますが、
治療成績は安定しており、術後の首の痛みもほとんどありません。

生活上の注意点は?

頭を後方にそらせるような姿勢だと、(特に神経根症で)症状が増悪しやすいです。

背筋をのばし、顎を引いた正しい姿勢が望ましいです。

また頚椎症が重度の場合、(特に脊髄症で)転倒などの軽い外傷で上下肢麻痺(脊髄損傷)が出現する可能性があるので、転倒しないように注意する必要があります。


※上肢痛を来す疾患についてマガジン「上肢痛」にまとめていきます。

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