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「鍵のない夢を見る」辻村深月
バナナで滑って転んだ人を見たことがありますか?
もしくはこう自転車で、片手運転でそばの出前を運んでいる人。
マンガでよく見る表現だが見たことがない。
そもそも本当にいるのか?ってかんじ。
絶対いる人達でこれらはどうでしょう?
殺人犯、泥棒、泥棒にあった人、これらは実際に存在するが、そうそう出会った人はいないのじゃなかろうか。
では次、
盗癖のある主婦、恋愛についてとことんズレる男、DV、夢しか見ない男、育児ノイローゼ、これらと出会ったことはあるだろうか?
話には聞いたことはあるかもだけど、自分は出会ったことがない。
存在することは存在するのだが、自分に直接関係がなければ、みんなフィクションと同じくらい軽く見てしまっているのではないだろうか?
そんないそうでいなそうな人達をテーマにした作品集が本作。
上記の人達に振り回される主人公、そして主人公がどうしてそうなってしまったかが描かれ、最後にはなにかが破綻してしまう、嫌な嫌な物語集だ。
育児ノイローゼは本人だけど。
もちろん、主人公を振り回してしまう人達が悪なので読んでいてむかつく気持ちを抱く。だが、主人公たちにも非がある為、なんだかもやっとする。
その"非"が普通の人でもやりかねないものなので、より"もや~"としてしまうのだ。
なんだか共感してしまう、という怖さがあるのだ。
人々は事件・事故については、因果応報でいて欲しいと思っているそうだ。
なんらか被害にあった人は被害にあっても仕方がない人であって欲しいと。
なぜなら真っ当に生きている自分達は被害に合わない、という安心が欲しいから。
でもそんなことはない、運命は相手を選ばない。
主人公たちもそんなに悪いことをしたわけではなく、ちょっとした弱さで深みにはまる。
何度も言うがこれが本当に怖い。
辻村作品を読むのも3作品目、なんか分かってきたのは良い・悪いに限らず目をそらさせてくれない物語を書く人なんだということ。
直視はきつい、もっとフォーカスをぼやかせてくれ。。