「奇談蒐集家」太田忠司
ジュブナイル小説にて多数のシリーズを発表。
他にもミステリーシリーズを多数、世に出している作家、太田忠司。
太田の”お”なので、いつも通っていた実家の近くの図書館で、本棚を隅から隅までめぐる時に最初に目につくのだ。
あいうえお順の棚だからね。
で、ライトなミステリーなのかな?2時間ドラマ御用達の作品ばっかなのかな?と変な偏見のせいで読むことは無かった。
無かったのだが、本作だけはどうにも読みたくてしょうがない魅力を感じ、借りて読んだ。
読み終わったあと、自分の嗅覚に自信を持ったのを覚えている。
面白かったのだ、とても。
奇談というフレーズにも、収集ではなく蒐集というフレーズにもどこか惹かれてしまう。
何か不思議なものが読めるのでは?と。
話は少しそれて、万華鏡の話をしよう。
万華鏡ってなんなんだろうね。
実家に一個だけ古い万華鏡があった。
昔ながらの和風の筒で、のぞき込んでくるくると回すといろいろな模様が見える。
自分が赤ん坊の時に買い与えられたのか?
なぜか由来もわからず家にあった。
子供のころ雨で外に遊びに行けない時、といって本を読むのもおっくうなほどだるい日には、万華鏡を見ながらだらだらとしていたのを覚えている。
この本を最後まで読み終わった時に、まず思い出したのがその万華鏡だった。
くるくると模様が変わる。
本作の内容がまさにそうなのだ、幻想か?現実化か?あいまいな境目。
あらすじ。
奇談を集めるのが趣味という好事家、高額報酬を与えると言う。
人々は彼の元に不思議な話を持っていくのだが、本当の奇談と見せかけてどの話も実は論理的に説明できてしまう。
人々が話をする、奇談蒐集家の助手が名探偵よろしく解明するという形で、いくつもの短編が語られる。
だが、先に書いた通り万華鏡のように事態が最後の最後に様相を変える。
このカタルシスが、本作をいつまでも忘れられなくしている。
ぜひ。
数十年たっておいてなんだが、太田忠司、他作品にも手を出してみよう。