「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩
子供のころ特にはまった作家が江戸川乱歩だった。
ポプラ社の少年探偵団シリーズを図書館で借りてよく読んでいた。
「電人M」や「怪人二十面相」など、明智小五郎と助手の小林少年、そして少年探偵団と怪人二十面相や他の怪人たちとの活劇に心躍らせたものだ。
まったくの無知だった為、発刊しているポプラ社が日本一の出版社だと思っていたぐらい笑。
子供のころ、あれだけ熱中して読んだのに、今となってはまったく覚えていないというね。。
不思議なもんだ。
でもわくわく感だけは覚えている。
そんな江戸川乱歩、唯一持っている本が本作、江戸川乱歩傑作選だ。
そのきっかけは漫画だった。
「北神伝奇」という漫画で、開戦前の昭和が舞台、民俗学と絡んだ様々な事件が描かれる。
作中に、主人公とその妹の様子を見て、乱歩が少年探偵シリーズを思いつくというエピソードがあった。
かつて読んだ江戸川乱歩の諸作は児童書として書かれたもので、大人向けの本もあるのだと再認識、そして何一つ読んでいないことを思い出したのだった。
で、本作を読むことにした。
ちなみに、この「北神伝奇」、続編の「木島日記」がめちゃくちゃ面白い。
日本の推理小説界の神様みたいな人、漫画で言えば手塚治虫のような存在である江戸川乱歩、古典として読んでおこうという気持ちだったのだが。。
面白かった。
子供のころTVで放送されていた、どろどろした怪奇探偵小説、倒錯した物語を中心としている作家だと思ったが、全然違った。
すごいパズラー、ロジカルな推理小説を書く人だった。
印象に残っている作品は2作ある。
1つは「二銭銅貨」、もう1つは「心理試験」。
「二銭銅貨」は、金は無いが暇だけはある貧乏青年二人が、世間をさわがせた強盗が、逮捕後も黙して語らない大金の隠し場所の真相に迫っていくのだが。。という話。
ネタバレかもしれないが、暗号もので知恵比べもので、どんでん返しもの。
これがデビュー作、すごい。
「心理試験」は取り調べもの。
犯人目線で語られる物語、完全犯罪を成し遂げたと思っている犯人が、明智小五郎の巧みな尋問で真相をみやぶられるまでの話。
犯罪実行の様子から用意周到な犯人がどんなボロを出すのか、ボロを引き出すのに明智はどんな策を用いるのか、二人の頭脳戦が面白い。
こういう密室での頭脳戦、今でも刑事物や探偵ものの最後で繰り広げられるシチュエーションだが、戦前に乱歩は現代とそん色ないクオリティの作品を出している。
すごい。
どうしても起源を探るみたいな気持ちで、いわば義務感で古典作品を読んでしまう。
現代の作家があとがき等で”古典に学んだ”的なことを書いていると、読まなきゃってなる。
勉強みたいな感覚なのだが、この作品は非常に楽しく、面白く読めた。
本を買わなくても、青空文庫で読めるのでネットで探してみて欲しい。