地球転生 第ニ話
最近バレント国の様子がおかしい、という噂をよく耳にする。なにやら黒魔術を使い始めたとか。これから併合したいというのに、おかしな事をされては困る。これは状況を伺わなければ。
私は兵を集めて呼びかけた。
「皆も噂は聞いているな。これから併合するにあたって、この噂は大きな弊害になる。ついては、君たちにバレントの調査を頼みたい!」
「わたくしの方で部隊を分けておきました。1日3回、交代制でよろしくお願いします。1回目の調査は実験も兼ねて、わたくしも同行しますから。」
セバスも呼びかけた。
この日より、バレントの調査(というより監視)制度が始まった。
「何も問題なければいいが。」
セバスの想いを叶えるためにも、何も起こらないことを祈る。
ー5日後
順調に調査が進んだ。今はちょうど15回目の調査中、バレントに勘繰られないように夜の部隊が闇に紛れている。兵士たちには遅くまでの労働を強いることになるが、これも国のためだ。
さて、彼らの帰還は遅くなる。その前に少し仮眠でも取っておこう。朝から働き詰めだったから、大きな睡魔が襲ってきた。
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轟音と共に突然目が覚めた。なんだか城内が慌ただしい。すると突然、セバスがノックもせずに部屋に飛び入ってきた。
「王、王!バレントからの襲撃です。」
「なに!?」
「王の寝入りを待って襲ってきたようで。被害者も多く、城は壊滅的な状態です。」
寝ぼけた頭では状況が理解できず、ベッドの傍らにあった水を口に含んだ。セバスの言葉を反芻させ、ことの重大さに気づく。
「なぜだ!我が城は難攻不落のはず。バレント如きに落とされるような城ではない!」
「ええ、わたしも存じております。ただ、ひとつ可能性があるとするならば、あの噂が本当なのかもしれません。」
「噂……。黒魔術か?」
「ええ。どうやら根も葉もない噂ではなかったようで。調査部隊の報告により、バレント国の王が、魔物が棲むと言われる森に行く様子が確認されました。」
聞いたことがある。その魔物たちは私たちの魔力をゆうに超えていて、特殊な魔法を使うと聞く。
「調査部隊によれば、その魔物たちの能力では、対象の姿形や発する音まで、模倣することができるとのことです。」
「なるほど。調査に行った兵たちを模倣し、本物とすり替わることで、城内に侵入。その後城を内側から攻めたということか。」
「わたしもそう思います。今から兵を招集すれば、まだ間に合うかもしれません。」
セバスが言う。普段なら頼れる古参の言葉。だが、私が放った言葉は冷淡だった。
「その必要はないさ、セバス…。いや、セバスに化けた悪魔よ。何が望みだ?」
「おや、ばれていましたか。」
セバスによく似た悪魔は、ニヒルな笑いを浮かべながらそう答えた。
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