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【陽だまり日記】ホワイト・クリスマスの朝。
今年のクリスマスは、平日。
週の真ん中にクリスマスが鎮座すると、なんだかハッピーホリデー感がいまいち湧き上がってこない。
つまり、今日は、いつもと変わらない朝。
駅へ向かう途中の、信号待ち。
学生さんたちは冬休みに突入したのか、町を行く人々の平均年齢が高くなっている。
年末までのラストスパート感を背負った社会人たちが、ひとり、またひとりと集まってきた。
……朝の大人たちは大抵、ちょっと厳しい顔をしている。
信号が青に変わると、一斉に彼らは、歩きだした。
私も最初はマエナラエの如く、コツコツ歩いていたのだけれど、不意にふらっと1つ目の角を曲がってしまった。
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其処にあるのは何でもない道なのだけれど、先程の通りとは全く違う空気が流れている。
それは、ゆるみのある、透明な空気。
時間には少し余裕があるから、寄り道をしてしまおう。
大丈夫、ほんのすこしだけ。
冬真っ只中となると、咲いている花は少ない。
其の中でも、日陰に在りながら、パキッとした黄色を咲かせたツワブキを見つける。
キク科の黄色ってユニークだ。
ちなみにツワブキはたんぽぽのような綿毛で種を飛ばす。
大抵、お正月の頃には、そんな風景を見掛けるけれど今年はどうだろうか。
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少し先をゆくと、山茶花の生垣が続く道に出る。
風が吹く度に、ピンクの花々がほろほろと散ってゆくのが少し切ない。
最後の一区画まで行って引き返そう。
そう決めて辿り着いたところに、その白い山茶花は佇んでいた。
はっとするような、密やかな白の色気。
清楚さに目を奪われて、思わず立ち止まる。
その可憐さに、冬の日差しはよく似合っていた。
山茶花の別名は姫椿。
何枚か写真を撮り終わるころ、白いお姫様から、そろそろお戻りなさいな、と囁かれた気がした。
私だけが知る朝の光景に胸を膨らませ、もと来た道を戻る。
誰も知らないホワイト・クリスマスに、唇がほころんだ。