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【陽だまり日記】サタデーナイト・ポタージュ

疲れが出ると胃の調子が傾きやすい。
食慾は有るのに、食べた後にずどーんと胃が重くなる。侭ならない。

つまり、今日はそんな日。
お昼に食べたやわやわのおうどんですら、重苦しく感じるのだから、「参りました。」の気持ち。


とは言え、なんとなく身体は冷えているし御夕飯は食べたい。
何を食べようかとぼんやりとしていると、思い浮かんできた物語は、「パンとスープとネコ日和」。

「かもめ食堂」が代表作の、群ようこさんの作品である。

自分の住む街の何処かにも、こんな素敵なひとが居るのではないかと思えるおはなし。 
淡々とした生活の息遣いに、心がほどける。


あの本に出てくるような、おいしいスープが、いやポタージュが食べたい。
そう言えば、大根が冷蔵庫に眠っていたわね、と思い出しながらキッチンに立つ。


大体、私の料理は思い付きである。
なんとはなしに気分が良くなるような工程を経れば、美味しいものが出来上がるんじゃないかな。 
それくらいの、ゆるい適当さ。
気楽に、丁寧でいれば、大抵のことはうまくいく。

鍋にオリーブオイル、そしてほんの少しなら胃に負担にかからないはずだと決め込んでニンニクを少々。
香りが華やかに登ってきて、だからきっと大丈夫。
スライスした玉ねぎを放り込み塩を振り掛けキツネ色になるまで炒めてゆく。箸で切れるほどの柔らかさになった頃合いにジャガイモと大根を加え、ひたひたの水を注ぎ暫くの間煮る。

豆乳や牛乳を加えても良いだろうけれど、胃の負担を考えて、今日はおやすみ。

くつくつ、鍋から微かに聞こえる音は、なんだか幸せを誘う。
キッチンに座り込んで其の音を聴いて過ごすと、頭が空っぽになって、心が満ちる。

柔らかくなった野菜をミキサーにかけて、ひと煮立ち。最後に味を調えて器によそう。仕上げは乾燥パセリを一振り。

サタデーナイト・ポタージュ

湯気のたつ其れを食卓へ運び、手を合わせ、1週間を労う。

1週間、良く生きました。

まったく、良く生きました。
いただきます。

ポタージュを口に含むと、ほっと溜息が漏れる。
案外、少なめにしたはずのニンニクが効いていて、指先まであたたまる。 コンソメを入れなくてもこんなにも味わい深くなるのかと驚く。

「美味しい」で、締めくくれた、土曜日の夜。

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