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【小説】ラバーソウル (井上 夢人)

洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里(みしまえり)を座らせる。大胆不敵、超細密。ビートルズの名曲とともに紡がれる...というお話。

いわゆるドンデン返し系ミステリー。
私的には冗長に感じた。
最後の仕掛けを披露するためにこの文書量は致し方ないだろうか?
構成が事情聴取風の記載と現在進行形の記載が混在と面白い進行だなと感じた。

生来から持つハンディキャップの影響で化け物として扱われてきた主人公、やっと見つけた人間らしい生き方や彼女への愛は彼を幸せにはしてくれたんだろうけど…。
いつも護られる側だった自分が護れる側になれて嬉しいという動機に理解はできるけど、盲目的になり身勝手な殺人鬼を擁護することは愚かしいものかなとも感じた。
望まぬハンディキャップと過去の悲壮な経験が相まって、主人公の行為や思想を一方的に糾弾することも憚れるという人間の心理をついていると感じたのは興味深い。

読んでいる最中に感じた違和感をきっちり回収してくれる結末。
ビートルズに詳しい方なら各セクションに感じ入るものがあると思う。
読後は『ノートルダムの鐘』に近しいシンパシーを感じるのではなかろうか。

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