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小説「吾輩はパンニャオである」①



吾輩はパンニャオである。名前はまだない。

どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間で一番獰悪な種族であったそうだ。この書生というのは時々我々を捕まえては、瓶の中に入れるという遊びをしていた。しかしその時は何という考えもなかったから別段恐しいとも思わなかった。ただ彼の掌の中で転びに転んで非常に苦しかった。

ある日、この書生の乱暴が祟って、吾輩は瓶から逃げ出すことに成功した。そしてそのまま駆け出して、何処ともなく走り去った。その後暫くは野良猫として過ごしたが、ある温かい家庭に拾われることになった。

新しい家の人々は優しく、吾輩に「パンニャオ」という名前を与えてくれた。パンニャオはパンが好きな猫という意味だ。確かに吾輩はパンをこよなく愛していた。それからの吾輩の日々は、ずっと穏やかで幸せなものだった

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