藤田文武『40代政党COO日本大改革に挑む』を読む
維新の藤田文武さんの著書『40代政党COO日本大改革に挑む』が出版されました。
出版お披露目もあって、先日ネットメディアSAKISIRUでウェビナーがありました。
私も疑問に感じたことを遠慮なく聞きました。維新に厳しめな質問ながらも、藤田「COO」から丁寧に回答も頂きました。
大阪維新の会のチャンネルでも新著についてインタビューされてます。
ただ、自党メディアですので当然ヨイショあります。佐々木りえ大阪市議・元グラビアアイドル様の美貌やミニスカが (・∀・)イイ!!とか書いたら「叩き潰す」「なくてもいい」界隈の連中のポリコレ棒に叩かれるんだろうな~。それはさておき。
4分ごろから「どんな人に読んで欲しいですか?」の問いかけあり、これに「一番はビジネスマン」と答えています。これもポリコレでヒヤッとしました。
と言うわけで、ご指名の「ビジネスマン」として好き勝手、気ままな感想を書きたいと思います。もちろん私は維新関係者でもなく、支持者でもなく、アンチ維新でもありませんので、ご理解のほど。
(1)SAKISIRUウェビナーでの自分の質問に対する答え
先にSAKISIRUのウェビナーで質問しましたが、回答への感謝もあり、支障無さそうな範囲で本書から回答にあたる部分は書いておきます。(ウェビナーは基本的に会員以外は非公開です)
これに関しては、第2章第3章で多くページ割かれています。ウェビナーでも説明ありましたが、発表されている中計は公開部分だけで非公開部分も実はあるとのこと。また中計だけでなくドリルダウンしたものもあるようです。確かに無いはずないと思いましたが、「企業秘密」は当然あります。
ここは、第1章「憲法改正、口先の自民VS本気の維新」でも言及されています。9/21のSAKISIRUウェビナーでも非常に積極的な考えを聞いて我が意を得たりと思いました。国会でのアホバカムダの撲滅は、維新野党第1党として何が何でも実績として出して欲しいです。
現状の国会法では、内閣は国会審議にほとんど関与できず、法案提出後に国会に法案審議を促す権限すら無いです。ほかG7ではありえないです。もし改正できたら劇的な変化があると思います。
この質問に対する回答が、第1章34ページからの「防衛費増額は仕方ないが、安易な増税は反対」「核の「論議」をタブーにしない」で出てきます。
しかし、私はこの内容には疑問です。タブーにしない趣旨は大賛成ですが優先順位です。話題の脈絡としても唐突感ありました。現状の安全保障の課題は通常戦力や待遇改善、宇サ電で、核共有の議論はやる余裕無いと思っていましたので、安全保障についての貧弱な現状を理解されてないのかと心配になりました。編集者はインパクトある核の話がウケると思ったのか、正直それに乗せられた印象を受けました。
例として。SAKISIRUウェビナーで自民党長島昭久さんに質問し、積極的なお答えも頂きました。これと同じ質問に維新ならどう答えるか。現状では見えてきません。青柳仁士さんはじめ維新の先生方にも期待したいところです。
(2)ビジネス・働く自分に刺さってくる
さて、この本は藤田さん自身が言う様に、特に仕事をしている世代に読んで欲しいという想いは強く感じられます。SAKISIRUで経営者目線について質問した回答は本書で多く出てきます。
数ページに1回程度「これ自分に向けて書いてるのか?」と思う記述に出くわしますし、随所で企業に置換えた話が出てきます。
逆にマスコミを通しての「藤田文武」のイメージには起業経営経験のニオイが消されていると本を読んで感じました。マスコミの印象操作というより、それだけマスコミ政治部記者が経済や経営に無知無関心だと改めてわかります。ここから、維新の支持・潜在的支持層が既存メディアを好まない層との親和性も感じます。
維新のチャンネルで経営者出身の同僚議員(金村りゅうな さん、岩谷良平さん)がツッコミ入れてます。私が中小企業でやってるから感じるのかもしれませんが、この動画は実に面白い。本と合わせて必見動画。
また本の題名のCOOってナニ?という方もいるかもしれません。私は会社で仕事しているからか、逆にさほど違和感なかったです。むしろ、いっそのこと企業と同じような役名に変えたらと思います。「代表」もしょぼいし、やるなら自民党と同じ「総裁」。
「総裁CEO」「最高執行責任者COO」だけじゃなく、最高政務調査責任者・CRO(Chief Research Officer)とか。他との差別化でインパクトあったらいいじゃないですか。
(3)「それ、おもしろそうやな、やろう」
中期経営計画(中計)を政治の世界に持ち込んだ点が本書のキモです。中計やりたい、を言うのは簡単です。しかし実行することを組織(のトップ)がどう決断するか。私もビジネスマンとして注目し興味深かった点です。
ここに馬場伸幸代表のドラマチックな一言がでてきます。これ印象的です。
馬場さんの「この一言」が自然に出るのが維新の雰囲気を象徴してると思いました。もっとも「深く考えずに言っちゃった感」もありますが、「ヒット商品」などはだいたいそういうものです。逆に会議を多く経て慎重に検討を重ねた商品ほど売れないのが企業では「あるある」風景。
すぐ思い出したのがこれ。
やはりこういう起業家マインドは関西弁で言われると「味」があります。
数年前のNHK朝ドラ「マッサン」堤真一さんの好演でも有名になりました。こういうネタでツッコミ合う明るい関西のノリは、人をひきつける不思議な引力を産みます。
(4)危機感の底流「大阪の地盤沈下」を思いだした
維新に関しての地域の温度差は、しばしば指摘されています。
大阪における維新の躍進の陰にある「地盤沈下の現実」を全国ネットのマスコミがあまり報道しなかったと感じます。(スポンサーの関係もあるとは思います)。
大阪での維新初期の奮闘は本書でも第1章で多く言及されています。
私も別で聞いて驚きましたがパナソニックの企業城下町門真市の法人税収入。1988年74億円が2021年12億円に法人税収減少だそうです。自治体の経営も従来通りでいいわけありません。ここで「身を切る改革」をやらなければ、示しがつかず何ひとつ改革できなくなるのは当然です。
読みながら関西の地盤沈下を実感した自分の体験を思い出しました。
昔、取引先の有名IT会社に「ウチの大阪の拠点はもう名古屋より小さい」と言われ驚きました。大阪仕事無くて仕方なく名古屋に回された営業マンの「大阪あかんのですわ」の寂しげなつぶやき。技術系人材面接で自分よりはるかに年上の「大阪から単身赴任でやれへんでしょうか。」の訴え。今も耳に残っています。
そんな自分の体験が本書の底流にある「危機感」に共感できるのかもしれません。逆に維新の進出に苦労している地域は第1章での大阪の当時の地盤沈下を体験的に知らないことも大きな要因かもしれないと感じました。
(5)自民党に対して丁寧に敬意を払いつつ、批判している点に好感
本書を読んでまた印象に残るのが、自民党に対して丁寧に敬意を払いつつ批判している点です。斎藤健前法相も著作と共に評価を受けています。
私も著作読んで注目していただけに「法相として不完全燃焼」に不満言いたいのもありますが。
齋藤さんだけでなく、自民党の特に若い先生方は政策を非常によく勉強されていて、腰も低く感心させられること多いです。私がX他で質問しても丁寧に対応されます。しかし「いいこと言ってる」と思ってもナゼか自民党では取り上げられません。潰されます。ナゼですか。「反対する方もいて難しい面もあるのです」の沈黙。ガッカリする時あります。若い議員先生方や若い官僚の方たちの高いポテンシャルを自民党や官僚機構が活かさないどころか「殺して」ないでしょうか。
ただ、この自民党や特に安倍総理に対して本書でも敬意を払っている点に私は好感を持ちました。私も自民党でなく、安倍総理の支持なので。
ちなみに「叩き潰す」「なくてもいい」人たちへの言及ほとんど無いです。あっても全く印象に残りませんでした。相手にしなくていいです。
(6)保守的な読者層(私みたいな人?)が意識されてる?
本書を読んでちょっとした注目は「保守的の読者層に近い」本か、また古典が意外に多く引用参照されていることです。実際ホントに読んだかどうかは別として、「政治家の読書」として考え方の傾向が読み取れます。
松浦静山『剣談』(『常静子剣談』)武術叢書所収。松浦静山の甲子夜話は有名ですが、野村克也監督の「勝ちに不思議の勝ちは無し~」の典拠は松浦静山の『剣談』。
(7)政治家「以前」のライフヒストリーが面白い
後半は藤田さんの政治家「以前」の話。経営での苦労や、挫折など自伝的に書かれていて、ここがまた面白い。本書と一部被るところを柳ヶ瀬裕文さんがツッコミ入れてます。
考えてみると、自民党だと良し悪しでなく、官僚や世襲で挫折なく来てて、同じような企画やっても面白くないのかもしれません。日経の「私の履歴書」も、老舗大企業の社長の月は大抵つまらんので読まない。
(8)イノベーションの政治家の本にイノベーションがない?
政治家の本なので、政策について論じられています。政策の内容に賛成でない点や疑問点もありますが、その内容の賛否以上に私が読んで感じた問題は「イノベーション」です。
藤田さんのように経営の観点で数字や金額にこだわるスタンスになると「縦書き」が読みにくくなる問題があります。
先年、高市早苗さんの政策本が総裁選もあってベストセラーになり話題になりました。
高市さんは政策に詳しく私も感心して読みましたが、本の議論の中では数字や金額の存在感が相対的に低い(彼女自身が軽視しているわけではない)ので、非常に読みやすかった記憶があります。
また書籍一般としては縦書きが読みやすいので、編集の方にも考えて欲しいところです。(Kindleでは縦横変換できるようですが煩雑で「往復」しにくい)
また、電子書籍の問題。私はKindleで読んだのですが、Kindleでネットで飛べる(遷移できる)ようになぜURLつけないのかと思いました。例えば
この説明だけで、すぐに実際のページに飛べないです。他にも協力してくれた維新の同僚議員さん出てきますが、すいません初めて見る名前ばかりで「ダレ?どこのヒト?どんなヒト?」と思っても、URL飛べません。私は読んで気になりましたが、kindle閉じたら検索するの忘れました。読者が勝手に探せばいいい、では読者を支持につなげる機会損失してませんか。電子書籍の良さを活かせてないのかと感じてしまいます。
こうした点になぜコダワルか。
自民党の老政治家の引退回顧録ではなく、イノベーションを自任する政党の若い政治家が書いた本だからです。
おわりに
以上が維新支持者でない自民党支持層が書いた感想、ということで。
私の感想を一番読んでほしいのは実は著者本人・維新の先生方支持者ではなく、自民党の先生方です。「こんな本じゃなくてオレの本を読んでクレ」を待ってます。