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#エッセイ
何者かになりたいわけではなくて、僕は僕を取り戻したい。
■「人間のやわらかい部分」と「もののあはれ」
数年前、大学の講義で観察映画を通じて「人間のやわらかい部分」について考える時間があって、その時のことを思い出した。
講義後、先生に話しかけたとき、本居宣長の詠んだ「事しあればうれしかなしと時々にうごくこころぞ人のまごころ」は「人間のやわらかい部分」と通じているのだと言っていたことが、深く印象に残っている。
ここで言う“まごころ”とは、誠意とかあた
いつもより永く静かな夢
視界が閉ざされてからいくらか時が過ぎた。目の前にすこしずつ映像が流れてくる。わずかに音は鳴っているようにも思える。自分と世界の境界線が曖昧な感覚がある。これは夢だ。
夢が夢だと気づいた時には、もうどれだけ夢に浸かっていたのか覚えていない。わかることは、たしかに生きている時とは感覚が違うことだけだ。この夢はいつ終わるのだろう。自分の意識とは別に、映写機が夢を流し続ける。いま、自分しか存在しな