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本屋散歩5軒「下町の本屋でチルする」@上野→浅草→蔵前

2025.1.11(土)

浅草駅の近くにある東京都立産業貿易センター 台東館で行われた「ZINE FEST TOKYO」の後に、浅草・上野界隈の本屋散歩をしてきました。

ジンフェスで盛り上がってしまい、2時間ぐらいブースの出展者の方々とおしゃべりに夢中になった後なので、1~2軒をのんびり巡るつもりだったのですが……

やっぱり面白いわけですよ。下町エリアもまた個性的な独立書店がひしめいています。リラックスできる座敷があったり、自分と向き合える選書だったり、喧騒を逃れてゆっくり時間を過ごせるようなチルい本屋さんが多い印象でした。

それではオフビートな休日を過ごすのにぴったりの、5軒の本屋さんを巡った記録を、写真32枚(店内撮影は許可をいただきました!)、文字数4,171字でお届けします。


[1]ROUTE BOOKS

インダストリアル×プラントの個性的な外観
多肉植物が出迎えてくれる本屋さん

上野駅から徒歩3分にありながら10年使われていなかった元工場に 工務店のYUKUIDOが引っ越してきたことがはじまりでした。ここには当時のキズや軌跡を残し、愛用されてきた証がありました。壊さず、造り込まず。手入れして利用したい。

建物の再生を考えるうちに、「つくり手から直接お客さまに届けられる場所」として、こんなのがあったらいいな、こうだったらいいなをひとつずつ形にしたのが ”書店”「ROUTE BOOKS」です。

本だけに限らず暮らしを楽しむための植物、廃材で捨てられてしまうようなモノの再生・利用としてリメイクした家具や雑貨などの販売をしています。 またワークショップなど学びの場としても。産地直送の穫れたて野菜のように、本当に良いと思えるものを自分たちの手で届けたい。 ‘つくり手からの想いを繋ぐ’ 本と植物と雑貨のお店です。

「ROUTE BOOKS」公式HPより

HPに謳われているように、お隣の工務店さんが経営されている本屋さんです。アンティークの温かみと、工場の武骨さ、宇宙的な植物が融合した唯一無二の空間。まずは素晴らしい店内をご覧ください。

1階はカフェスペース兼本屋さんです
古い手摺や階段の味わいにも見惚れてしまいます
簀の子状の板に木箱を重ねた円形の本棚
本棚かと思いきや、こちらも木箱をランダムに重ねてありました
古い業務用冷蔵庫みたいなアンティークが本棚に!

木の棚に目が奪われてしまい、紙の本への言及がおろそかになってしまいました。失礼。選書は一言でいうと最高です。3度目の訪問なので最高基準に慣れてしまっていました。

初めて訪れた時には、本棚に3時間以上釘付けになり、同行の友が先に帰ってしまったというエピソードがあるぐらい、吸引力のあるラインナップです。

道を挟んで隣にある工務店〈YUKUIDO〉

〈YUKUIDO〉さんでは、廃材を利用してDIYができるワークショップも行っているみたいです。今度やってみたい!自分で本棚作ってみたい!

『BEYOND WORKING』働くことについて考えるマガジン購入

棚にはZINEやリトルプレスの扱いもあります。ジャンルとしては、働くこと、食べること、暮らすことにまつわる書籍や、児童文学まであって幅広いですが、1冊1冊がピシっとした審美眼でチョイスされています。ここでは働くことに関してのいい本がよく目に留まるので、新刊雑誌を購入しました。

独立系の新刊書店では同じ本を扱っているお店も多いですが、不思議と「こちらのお店では働く本を、あちらのお店では旅の本を」というふうに、欲しくなる本が違うんですよね。棚から聴こえる囁き声が、どこの本屋さんでもみんな違っている。本屋散歩の楽しみのひとつです。

[2]Readin’ Writin’ BOOK STORE

浅草に来たなと思う瞬間

かっぱ橋道具街を通り過ぎます。ニイミのコックさんは健在でした。浅草のシンボルを通りすぎて田原町へ。

日本一走る本屋〈Readin'Writin' BOOK STORE〉

〈Readin'Writin' BOOK STORE〉へ。いい空間ですよねぇ。天井が高くて、座敷のロフトがあって、広々した開放的な本屋さんです。

この日はちょうど第1土曜日だったため中二階のロフト部分で「お座敷一箱古本市」も開催されていました。参加費1000円らしいので、気軽に出れますね。同じ中二階ではシェア型の棚もあるそうです。

思想・哲学・政治・フェミニズム。パンでいうならハード系。

店主の落合さんと雑談。以前刊行記念のトークイベントをやっていただいたりしたご縁で、遊びに行ってます。でも最後に来た時から、もう2年もご無沙汰してしまいました。

その節はちょうど入院する前だったので、大量買いした記憶が。「入院するって言ってたけど大丈夫だった?」と、間が空いてしまったのに覚えていてくれて嬉しくなりました。

落合さん、昔から走っているイメージでしたが、どんどんペースがあがっているようで。マラソン大会に出まくり。Xで「日本一走る本屋」と名乗り始めていました(笑) 

2017年に定年間際の58歳で開業ですから、今年で御年65歳だそうですよ。ぜんっぜん見えないんですよねぇ。やっぱり走ってるからでしょうか。「ランニング雑誌とかから取材こないかなぁ」と言ってました(笑) そろそろ来るんじゃないでしょうか。

DIYした棚もあるそうです!

「本屋さんやりたい!」と話したら、どの本屋開業本を読んでも書いていなかった、開業後に直面した運営のあれこれの話をしてくれました。レジや什器はどうしたらいいのかなど。おかげさまでめっちゃイメージできました。ありがとうございました!

落合さんが書かれたこの本もためになりますのでぜひ。〈Readin'Writin' BOOK STORE〉の開業前夜の話などが詳しく読めます。

選挙の前に読みたいブックガイドを購入

"アイスのように、政治を愛す?"というキャッチコピーと、装丁のよさに惚れて、選挙のためのブックガイドを買ってみました。やっぱりここに来ると、背伸びして政治や思想の本を買ってみようかなと思うのであります。

[3]透明書店

大江戸線の方の蔵前駅すぐそばにあります

クラウド会計ソフトの「freee」が、スモールビジネスを応援するために2023年4月にOPENした〈透明書店〉に初訪問してきました。

入店するとAIのくらげ副店長が出迎えてくれます。その日の売上で機嫌が変わるらしいです。この日は穏やかそうにしていました。

入って最初に現れる棚
円形の平台には推しの新刊が並んでいます
リトルプレスや小さい出版社の本棚も目を惹きます
オリジナルトートバッグやTシャツも
シェア型の棚もありました

店舗奥には、独立系書店〈透明書店〉の中にある「独立したい系書店」が。イベント半額などの特典も色々あるっぽいです。

『街灯りとしての本屋』を購入

freeeが出版しているフリーペーパー『pathports』もいただきました。ジャンル別に配置されたスモールビジネスの参考になりそうな実用書が多く、コンセプト特化型で面白かったです。これから小商いを始めたいと思っているので、頼りになる本屋さんとの出会いでした。

[4]Frobergue

イギリスかフランスに来たのかと思いました

すっかり日が暮れてしまいましたが、まだ17時過ぎだったのでもう1軒ハシゴします。なんだか、のんべえみたいな感覚で本屋を巡ってますね。

こちらは絵本の古本屋さん〈Frobergue〉です。〈透明書店〉は大江戸線でしたが、こちらは浅草線の蔵前駅のすぐそばにあります。両店舗は徒歩7分ぐらいなので、ちょうどよい散歩コースです。

看板から絵本の世界に誘われます
玄関マットが迎えてくれて海外書店みたいです
重厚感のある店内は落ち着きます
うねうねした金属のライトが素敵
『本屋が閉店する前に』リトルプレス購入

ヨーロッパの各国で買付けされた、貴重な洋書絵本やアートブックが中心のラインナップですが、リトルプレスの取り扱いもありました。「本屋さんが閉店する」というテーマで、独立書店の店主たちがエッセイを寄稿している面白いアンソロジーを見つけたので購入しました。

[5]封灯 FUTO | 詩的喫茶

さぁもう夜も更けてきたので駅に向かって歩いていると、カフェのような文房具店のような、不思議なお店が出てきました。窓越しに覗いていると、店内からお店の方が出ていらしたので、喫茶店ですかと訊くと「未来への自分へ手紙を書くお店なんです」と。ここが噂に聞く〈自由丁〉だったんですね!

こちらは手紙を書くための専用スペースになっていて、近くにある姉妹店の〈封灯〉ではカフェ利用もできるとのことなので、行ってみることにしました。

〈封灯〉に入ると日付順に並んだ封筒が出迎えてくれます

徒歩5分ぐらいで〈封灯〉に到着。いい感じの喫茶店です。お客さんが書いた「未来の自分への手紙」は日付ごとに木箱に入れられています。1年後が近づくと、店員さんが郵便ポストへ出しに行ってくれるんだそうです。ほっこりしますね。

店内には本も置いてあり、自由に読めるブックカフェスタイルです
コンクリート打ちっぱなしに紐で吊り下げられたライトがモダンな印象
メニューも封筒に入っています
珈琲とお菓子にはそれぞれ詩がついてきます

詩的な言葉と飲み物、お食事やスイーツとご一緒にもお楽しみ頂ける喫茶メニューです。機械的・論理的な言葉ではなく、情緒的で時に曖昧。そんな詩的な言葉に触れる機会を世の中に増やしたいという願いと共につくられました。

自由丁オーナー小山が毎日書くエッセイや詩『今朝の落書き』の中からの優しい言葉たちとドリンク、スイーツをお楽しみいただけます。

「自由丁」公式HP

透明のアクリル板に書かれた一編の詩を読みながら、珈琲で一息入れます。
いい時間です。この詩はオーナーであり詩人の小山将平さんが書かれているのだそうです。noteにインタビューがあったので読んでみたら、起業家×詩人という面白い経歴の持ち主でした。

今度は誕生日や記念日などに来て、自分への手紙を書いてみたいと思いました。あぁ。よい1日でした。上野から浅草を経て蔵前まで。下町の本屋さんで深呼吸した1日でした。おしまい。

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