ブコウスキー「勝手に生きろ!」
邦題感のあるダサいタイトルだけど、原題はfactotum。雑役夫という意味らしい。
舞台は第二次世界大戦中のアメリカ。酒浸りの主人公はロサンゼルスにマイアミ、ニューヨークとアメリカ大陸を転々としながら、職も転々とし、一カ所にとどまらない。時代も舞台も令和日本とは離れているが、平成以降のフリーターの生き方を想像すれば共感しやすいと思う。
犬のビスケット工場、画材店、蛍光灯取付器具会社etc……この作品の中だけで18種類もの職を転々としている。
主人公が就くのは、誰でもすぐ覚えられるような仕事ばかりで、代わりがきく。若いころ、人間関係をリセットするくせがあり、アルバイトを転々としていた自分としては読んでいて痛々しさとともにある種の爽快感すらある。
仕事をクビになる理由も、飲んだくれて無断欠勤したり、どう考えても自業自得なんだけど、だらしなさの中にやさしさや人間くささが垣間見えて、主人公のことを憎めない。
頑張って結果を出していきましょうという、世の中に蔓延るポジティブな考えに窮屈さを感じている人たちにオススメします。こうやって逃げつづけながらでもなんとか生きていける気がするというか、後ろ向きだけどポジティブな気分になれます。
以下、好きなフレーズ↓
ただ仕事をするだけではなく、その仕事に興味を持ち、しかも情熱を持ってこなさなきゃならないと知ったのは、そのときが初めてだった。
おれには孤独が必要だった。他のやつに食べ物や水が必要なように。一人になれないとおれは日ごとに弱っていく。別に孤独を自慢してるわけじゃない。孤独に頼ってるだけだ。部屋の暗闇はおれにとって陽の光だった。おれはワインを飲んだ。
ちなみに映画化もしています。「酔いどれ詩人になる前に」というタイトルでマット・ディロン主演です。