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「人間に向いてない」読書感想

第57回メフィスト賞受賞作、黒澤いづみ著『人間に向いてない』を読みました。なかなかに目を引くタイトルですね。

ざっくりと概要を説明しますと『異形性変異症候群』という奇妙な現象が流行るんですよ。おもに、ニートや引きこもりといった若者が、気がついたら虫みたいなグロテスクな異形の姿に変貌しているという、おぞましい現象です。

この設定を聞いて、あの名作文学を思い出した方も多いのではないでしょうか? そう、フランツ・カフカの代表作『変身』です。

もっとも『変身』では家族の経済をささえていた長男が虫に変貌します。『人間に向いてない』だと親のすねかじりであるニートが変貌するので、真逆ですね。

虫の混ざった姿に変貌するのがポピュラーのようですが、人によっては魚や、樹木、人面犬みたいな姿になったりとまちまちです。その際、眼球や指など、人間時代のパーツがそのまま残っていたりして、映像化するとさぞキモイでしょうね

法的には異形化した人物は、死亡したのと同じ扱いになるので、残された親はどうするか自由です。そのまま飼育するもよし、保健所に持ち込んで処分してもらうもよし、親の感情がたかぶり自ら手にかけるケースも少なくないようです。

主人公の田無美晴は、22才の息子が『異形制変異症候群』にかかり、虫みたいな姿に変貌してしまいます。夫は息子のことを失敗作とし処分する気ありありですが、美晴はなんとかしようと思い、自助グループなどに参加するのですが、女性が多い団体のこと、そこには派閥があり……。という展開になります。

ちょっとトンデモ設定ですが、ゾンビ映画といっしょで細かいことはどうでもいいんです。自分ならこの状況だとどうするかな? と想像しながら読むことをおすすめします。

ニートの若者も社会問題ですが、これからの日本の5080問題なども想起してしまい、人ごととも言い切れないなと思ってしまいました。


#読書感想文

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