居心地
西日が差し込む店内で、ゆったりと珈琲とケーキを楽しむ。耳に入ってくるのは店員と常連客の話し声。地域の関わりを身近で感じた。
その関係が憧れで羨ましかった。
錦糸町から歩いて5分、表通りに面している中でひっそりと明かりを灯している。
"すみだ珈琲"
よく見ないと通り過ぎてしまうほど、周りに溶け込んでいるのは、下町の風情が残る錦糸町だからだろうか。
引き戸を開けて中に入る。店内には窓際の席で話している2人組の女性、パソコンと睨めっこしている男性、そして店員と仲良く話すご高齢の女性がいた。孫も一緒に来ていたが、うとうとと眠そうにしている。
テーブル席に案内され、何を頼もうかと考える。正直突発的に来たから、何があるのかさえもわからなかった。
壁にかけられたオススメのメニュー、そこに"チーズケーキ"と書いてあった瞬間、それに決めた。そして、甘味とちょうど合う珈琲も忘れない。
「お待たせいたしました。」
目の前に置かれた、濃厚でどっしりしているチーズケーキ、そして、"江戸切子"の風情ある珈琲。コーヒーカップと言ったら、白が一般的だが、これは青。
キラキラと輝くカップに入った珈琲。
それだけで、いつもとは違う贅沢感を感じた。
珈琲とケーキを味わいながら、夕刻の余韻に浸る。耳に入ってくる常連さんと店員の話し声は地域のつながりそのものを表しているようであった。
有名なカフェや、最近のものは店員とお客さんがこうも親しくなれることはなかなか無いと思う。少し前に行った原宿のお店では、店員はいつも忙しなさそうに動いていた。お客さんもパソコンを眺めている。都会のオシャレなお店と言ったらこんな感じで、かっこいいと思う人もいるだろう。だけど、私は少し寂しく感じる。
いいものを見た一方、憧れと羨ましさを胸に抱えながら、伝票を持たず、お会計をした。
「また、お待ちしています。」
久しぶりに聴いたその言葉は、また私をここに連れてきてしまうのだろう。