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子どもの声に寄り添いカタチにするスタッフにインタビュー!~子どもが企画運営する「こどもキカク」とは?~

こどもまんなか社会の実現に向けて、全国で様々な大人が動き始めています。

放課後NPOの運営するアフタースクール拠点でも、こどもをまんなかに、子どもたちの「やりたい」を叶える、とあるプログラムが実施されています。

今回のnoteでは、とあるプログラム――「こどもキカク」を実施している拠点のスタッフ武井さん、国井さん、齋藤さんにお話を伺いました。


■「こどもキカク」について-誕生と実施のあらまし

──本日はよろしくお願いいたします。
さっそくですが、「こどもキカク」について概要を教えてください。

国井さん:
「こどもキカク」では、毎月1回 月末に、子どもたちがやりたいと言った企画を子どもたち自身で計画・実施しています。
月末は定期的に開催するプログラムがないので、設定しやすく、準備期間をとるためにもこのようにしています。

──月末のプログラム実施にあたり、どうやって実現に向けて動くのでしょうか?

国井さん:
前の月にやりたいという声があれば、そこから企画を進めます。
5月に初めて「こどもキカク」を実施した際は、去年プログラムを運営したこともある子を中心に「やりたいことある?」と聞いて進めましたが、6月は、遊びの中でぽろっと出てきた「やってみたい」を拾って実施しました。

──今年度に入って、毎月やるようになった理由を教えてください。

齋藤さん:
子どもの声を聴くというのは、昨年度から不定期で少しずつやってはいたんですが、枠を設けた方がより子どもたちも分かりやすいし、スタッフにとっても声を拾いやすいんじゃないかと思ったのが元々のこどもキカクスタートのきっかけでした。

今年は、やりたいと声を上げたらできるチャンスがあるということが子どもたちに定着してほしくて、武井さん中心のチームを組んで月に1回の開催へと頻度を増やしています。

──毎月チャンスがあるというのは、子どもたちもやる気が駆り立てられそうですね。

齋藤さん:
「やりたい」の声は、日々ちょこちょこと挙がってはいたんです。でもやってあげたくても、大人の都合ですぐにその場での実現というのは難しくて。
なので、月末にそのための枠を設けて人員を確保しておくことで、実現しやすくなったし、運営的にもとてもやりやすくなりました。

「こどもキカク」の活動を武井さんがまとめた掲示物。
これを見た子どもが、自分もやりたいと声を上げることも。

■9月開催のマルチドッジボール-「共に頑張る」子どもたちに育まれた絆

──では、「こどもキカク」について深掘りさせてください。
企画を実施して、印象的だったエピソードはありますか?

国井さん:
9月がとても感動的だったので、武井さんに話していただくとして……(笑)。5月に実施したミニ運動会は、運営経験者だった子たちが担当したこともあり、いい感じに進行できて振り返りも前向きなものが多かったです。

ですが、6月の宝探し占いは、普段「してもらう側」で「やる側」を経験したことがない子たちがチャレンジしました。
やってみてよかった、またやりたいという意見もあれば、こんなに大変ならもうやらないという意見もあり、大変さと楽しさを両方学んでくれたのがよかったなと思います。

武井さん:
6月は2年生中心でやったんです。低学年なので、企画して実行するということを学校でも経験していない子たちだったので……こう進めていくんだよ、というのを教えるのが大変でした。

──大変なこともありつつ進行されたのですね。
先ほどフリのあった、9月の感動的なお話というのは……

武井さん:
(笑)
9月の企画は、ある一人の5年生の男の子が、みんなで「マルチドッジボール」をやってみたいと声をかけてくれたんです。

※マルチドッジボールとは:ボールを2つ使用する、外野なしのドッジボール。ボールを当てられた場合はコートの外のベンチゾーンに移動するが、中に残っている仲間がボールをキャッチすると中に戻ることができる。

まず、大人数でのイベント運営は一人ではできないから、仲間を見つけないと実現しないよと伝えました。すると、子ども自身で声をかけて、補佐の子などチームメンバーを集めていきました。

大人としての企画サポートでは、企画の進行を促したり、疑問点を書き出したシートを作成しました。大人の気付いていること、逆に大人が気付いていないけど子どもが気付いているところのコミュニケーションをとる方法は、私も勉強になりましたね。

それで当日なんですが……、なんと、準備を一生懸命やってくれた子の一人が体調不良で来れなくなってしまったんです。

──えっ。

武井さん:
そうしたら、一緒にやっていたメンバーたちが「せっかく頑張ってたのに、その子がいないならやめない?」と言い出して。頑張ったみんなでやりたいんだなと、心にグッときました。

ですが、今日を楽しみにしてきた子や、予定を調整してきてくれた子もいるわけです。なので、反響があれば第二弾、第三弾と続けていけばいいから、今日はやってみようよと提案して、子どもたちも納得してくれて実施できました。

当日のチーム分けも、いつも一緒に遊んでいる子どもたち自身がそれぞれの力量もわかっているだろうと任せたものの……いざ始まってみると、力のバランスがうまくとれず、弱いチームが出来てしまいました。

そこで揉めたりもあったんですが、頑張って作戦を考えて挑む姿を見た周りの子が、褒めたり応援をしはじめたりして、またもグッときちゃいました。

結局そのチームは全敗。その日限りのチームでしたが、皆号泣でしたね。

──号泣!

武井さん:
勝ち負けのあるものは、子どもたちは本当に真剣ですよね。
即席のチームでどうやれば勝てるのか考えたり、声を掛け合ったりとか、最終的には「こどもキカク」としてだけではなく、もっと壮大な、色々な体験ができたと思います。


■子どもたちに任せてみてよかったこと-意外な「いい効果」も

武井さん:
この企画運営は、みんなに経験してほしいなと思います。

準備が大変であること、人の前に立って話を聞いてもらえないときの気持ちや、聞いてもらうためにはどうしたらいいのか……。
「先生がいつも話を聞いてと言ってるのはこういうこと」というのを子どもたちも分かったみたいで。

特に真面目な話をしたい場面には、話を聞いてくれるようにもなりました。「3分だけ!」など、少しだけ時間を頂戴と提示すれば、こどもキカクを経験した子は聞く態勢になるというのが身についていて、やってよかったなと感じましたね。

──少年漫画さながらのお話に胸が熱くなりました……!

武井さん:
体育館に50人が渦になって集まって、すごい光景でしたよ。

──50人も! 子どもたちの声かけで集まったのでしょうか?

武井さん:
2週間くらい前に、ポスターを掲示して告知したんです。参加したい人はポスターに名前を書く形で、それと併せて声掛けをして。そうしたら次々と集まりました。

そもそも、子どもたちから12人を4チーム作りたいから48人必要だと希望があったんです。じゃあ、48人をどうやって集めるのか?と話し合って。
「先生も声掛けをするけど、自分たちでも集めないと厳しいよ」と伝えたら、頑張って声をかけていました。

──この大人数を子どもたちが集めるのはすごいですね。
子ども自身にやってもらった理由や、任せようと考えている範囲などはあるのでしょうか。

武井さん:
子どもたちの中だけで話が通じるところは、任せようと思っています。

今回実施したマルチドッジボールは、ボールを当てられた子は残っている仲間がボールをキャッチしたら中に戻れるルールなんですが、私自身はやったことが無くて。

普段遊んでいる子どもたちの方が、遊び方・楽しみ方を知っていたので募集は任せて、こちらでは対戦の仕方など「うまく皆が楽しめる方法」をいくつか用意し選べるようにサポートをしました。


■大人にできること・伴走方法-子どもの意見の取り上げ方、モチベーション維持のためにやったこと

──6月の実施では低学年が企画したとのことですが、学年が違うと任せた部分や大人のサポートも異なったのでしょうか。

武井さん:
6月の「宝探し占い」は、占いにハマっている2年生の「誕生日占いを校庭に埋めて探したい」という話から始まりました。

でも、埋めた場所を覚えるのも困難だし、そもそも校庭に埋めることはできないし。占いを365日分つくるのだって大変だろうと(笑)。

なので、場所はここなら実施できるよ、占いにも色々あるよと一緒に考えながら進めていきました。
特に作成するコンテンツである占いのところは、何人分の誕生日占いをつくるのか、参加人数は何人なのかなど、考えるのも作ることも大変であることを説明して。

子どもたち自身も無理だと気づいたので、最終的に申込先着15名と参加人数を絞り、12種類の星座占いにしようというところで意見が合致しました。

──本人たちの納得できる形で着地するような提案をされたのですね。
準備が大変だと気づいた時点で「やめたい」等ネガティブな意見が出そうですが、どうでしたか?

武井さん:
もちろん出ましたよ。そういうときは、「やめるのは構わないけど、本当にいいの?」と聞きます。

すると、参加しているメンバーが4人くらいいると、その内の1人くらいは「やっぱりやりたい」って言い出すんです。そうするとその子を中心にやっぱり楽しそうだからやってみようという流れが生まれて、折れそうな心が復活するみたいな。

──なんとか続けてみると「できるじゃん」と気づくと。
その他に子どものモチベーション維持のためにしていることはありますか?

武井さん:
子どもたちと企画をやるとき、私からは絶対に「無理」と言わないようにしているんです。

「やってみたい」に対して、やるなら何が必要だと思う?と問いかけてみて、そして自分自身で「やっぱり無理かも」ということに気づいてもらいたくて。

考えてみてできるかもと思うなら、頑張って難しいものを実現するか、何かを我慢してできる範囲で実現させるかというところで、提案や声掛けをしたり。私からは、「無理」ではなく、「できる方法」を伝えるようにしています。

齋藤さん:
意思決定は子どもに委ねるんですよね。良いも悪いも、やるもやらないも、最後の決めるところは。

──なるほど。ちなみに、「こどもキカク」と大人主催の企画とで、異なる反応はありましたか?

武井さん:
子どもの企画だと、次なにやるの?とか言い出しますね。子どもたちも興味があるみたいで。

齋藤さん:
たしかに。私たちの拠点ではカレンダーを掲示しているんですが、「こどもキカク」の欄に何も書いていないと、聞かれたりします。

子どもがメインでやっているプログラムは、大人が企画するものより……子どもたちが積極的に動きますよね。

武井さん:
私たちの進行だと話を聞かないで遊んでいたりするけど、子どもの声が聞こえるとマイクの方を向いたりしてね。

齋藤さん:
子どもが考えることだから、子どもに響くんだなというのは感じますね。見えない温度感というか、空気感というか。

武井さん:
あと、大人の企画にはすごく厳しく追及されるんですが、子どもの企画には「これはこうしたらよかったんじゃない?」とすごく優しく指摘するんですよね(笑)。

齋藤さん:
たしかに(笑)。

──意見の仕方がマイルドに!

武井さん:
やさしいですよね。大人に対しては結構な……。

齋藤さん:
ヤジが飛びますね(笑)。


■子どもがやってみる「こどもキカク」-大人のやってみた感想と願い

──ありがとうございました。
最後に、「こどもキカク」を通しての子どもたちへの願いなどがあれば教えてください。

齋藤さん:
今年「こどもキカク」を実施してみて、子どもたちも「やりたい」と声を上げてくれていて。

月一で実施しようと考えた狙いは達成できているな、やってよかったなと感じています。

子どもの「やりたい」がたくさんあっても、普段大人が忙しくしている様子ばかりみていると「どうせ無理だろうな」と諦めてしまうので、これからも「やりたい」を叶えるチャンスがあるとわかりやすく提示することは続けていきたいと思っています。

今は主に高学年が中心になって、こどもキカクを実施していますが、低学年もそれを見て「ここはやりたいができる場所なんだ」ということを知って、今後この拠点の文化として定着してほしいなと思います。


■おわりに

今回のインタビューを通して、「こどもまんなか」のための手がかりの一つが見えてきたように思います。

「意思決定は子どもに委ねるんですよね。良いも悪いも」とお話があったように、大人がただ一つの答えを用意するのではなく、いくつかの選択肢の中から子ども自身で自己決定する。

そうした日々の小さな「チャンス」と「できる」の積み重ねが、こどもまんなかの放課後への確かな一歩となるのではないかと感じました。

文:コミュニケーションデザインチーム・伊嶋


■オンラインフォーラムで「こどもまんなか」について考えませんか

放課後NPOアフタースクールでは「世界こどもの日」に寄せて、11月14日(火)にオンラインフォーラム「こどもまんかなでつなぐ学校と放課後~いま地域と自治体ができること~」を開催します。

2部構成で実施し、第1部では、こども家庭庁ご担当者や有識者を交えて、こどもまんなか社会のために国・自治体ができる小学生の放課後施策について考えます。第2部では、東京都三鷹市・北海道安平町より、学校や地域とともに子どもたちの育ちを応援する事例をご紹介いただきます。

こどもまんなかを目指す私たちは子どもに対して何ができるのか、みんなでつくるwell-beingの形がどういったことなのか、一緒に考えませんか?

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