2021年に観て印象深かった映画を振り返る④ 二月編 その2(平成ガメラ三部作)
今年観て深く印象に残った映画を総括していく記事も今回で四回目。本稿では「シン・ウルトラマン」への予習※として二月に鑑賞した、いわゆる“平成ガメラ三部作”の感想を述べる。
ちなみに俺は“昭和ガメラ”は完全に未見であり、アナログ怪獣巨大特撮モノ自体メジャーな作品(初代「ゴジラ」「三大怪獣 地球最大の決戦」「ゴジラ対ヘドラ」など約十作品程)しか鑑賞した経験がない。そんな巨大特撮初心者〜中級者の感想である為、細かい知識に欠ける点はどうかご容赦頂きたい。
※「シン・ウルトラマン」の監督:樋口真嗣氏が三作ともに特技監督を務めていることから、謎に包まれたその内容を推測する為の材料になるのでは?と考えた。とはいえ二月の予習も虚しく、三月に公開予定だった「シン・ウルトラマン」は延期となってしまった。続報が来る日を心待ちにしている。
1、「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995年)
太平洋上で巨大漂流環礁が発見されたころ、九州の姫神島で謎の人間消失事件が発生。「鳥! …鳥! ……」という無線を最後に消息が途絶えたことから調査に訪れた鳥類学者・長峰真弓は、そこで巨大怪鳥を目撃する。
一方、海上保安庁の米森と保険会社の草薙は環礁上にあった石板の碑文を解読。
その結果、環礁がガメラ、怪鳥がギャオスという古代怪獣であることが判明し……。
(Amazonより引用。)
1995年に公開された平成ガメラシリーズ一発目。
どうしてもCGを駆使して本物さながらの映像を見せてくれる近年の映画と比較してしまうので、この手のアナログ特撮は幼少期に観ておくべきだったな…と常々感じている。
そんな考えを持っている俺の目にも、本作の工業地帯爆破シーンは凄まじく映った。贔屓無しにミニチュアに見えない大迫力である。
反面、街中の戦闘シーンからはどうしても“作りモノ感”が拭えない。膨大な家屋・建物の一つ一つに生活感を作り込むのが困難だからだろう。結局ガメラとギャオスの対決自体よりも、広大で緻密なセット──即ち撮り直しがきかない状況下の中で大暴れしなくてはならない“二匹の中の人”は絶対に演技をミスれないよな...という点に意識が向かってしまった。
余談ながら、爆風スランプが歌う主題歌:「神話」がやたらと格好良かった。
2、「ガメラ2 レギオン襲来」(1996年)
ガメラとギャオスの死闘から数年後、北海道に流星雨が降り注ぎ、その一つが恵庭岳近くに落下。陸上自衛隊の捜索も虚しく隕石は未発見に終わるが、札幌青少年科学館の穂波碧は、隕石が自力移動した可能性を示唆した。
5日後、隕石の正体である無数の宇宙昆虫と巨大宇宙植物が札幌市に出現。そこにガメラが現れ、昆虫と植物を駆除せんとするが……。
(Amazonあらすじより引用。)
平成ガメラ二作目となる本作は、前評判に違わぬ超名作であった。個人的な意見としては、三部作の中では本作が明らかに出色の出来だったと感じる。自衛隊の活躍やサラリと教養を発揮させる劇中の命名シーン(本作においては聖書を引用した“レギオン”。日本神話の八塩折之酒を引用した“ヤシオリ作戦”並みにあっさり名付けられる)等、樋口真嗣氏が関わる「シン・ゴジラ」に継承されていく要素が多々みられるのも興味深かった。
敵怪獣:レギオンの得体の知れなさから来る緊張感と恐怖感、そして生態が徐々に解明されていく様が面白い。大量に出現する甲虫風の“チビレギオン”の気持ち悪さも良い。この時点での樋口真嗣氏の能力はフィル・ティペット氏※に匹敵するレベルだったのではないか?とさえ感じた程だ。
また前作と比べ、特撮のレベルが明らかに上昇しているのも見所。前作に感じた安っぽさがかなり薄れており、現物の建物と遜色ない雰囲気のミニチュアシーン(特にレギオンの“草体”が植え付けられるビル)が相当増えている。前作からそれほど期間を開けずに公開したことを考慮すると、目覚ましい技術の進歩があったことが素人目にもよく解る。
このような映像面においても、また物語面においても非常に出来が良かった本作。先日の再上映は機会を逃してしまったが、いずれ劇場でも観てみたいと思わされた一本だった。
※「スター・ウォーズ」シリーズ、「トワイライト」シリーズ等に携わった特殊効果界の大御所。「ガメラ2」は氏が携わり甲虫型のCGクリーチャーが多数登場する「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)以前の作品であるが、確実に圧倒的な予算の差があるにもかかわらず全く見劣りしない。
3、「ガメラ3 邪神<イリス>覚醒」(1999年)
ガメラとギャオスの闘いで両親を失った比良坂綾奈は、ガメラを激しく憎んでいた。そんな折、綾奈はある洞窟で謎の生物を発見。イリスと名付けて可愛がる。
一方、東京・渋谷に二匹のハイパー・ギャオスが飛来。ガメラがこれを撃退するものの、甚大な被害が出たことから政府はギャオス以上にガメラを危険視することに……。
(Amazonあらすじより引用。一部改変。)
平成ガメラ三部作の完結編となる本作の白眉は、渋谷駅前と京都駅のミニチュアセットとCGで行われた空中戦。1999年公開、かつ低予算な筈の邦画でここまで出来たのは凄い。こちらも前作同様、劇場で観たいと思わせる程の映像美だった。
「ガメラ2」の高い完成度と比較すると気になる点も多かったが、それでも印象に残った作品であることは間違いない。特に我々が過ごす日常が完全に崩壊してしまうラストシーンはトラウマものであり、上記のDVDジャケットを見るだけでその恐ろしさが蘇る。大人も子どもも「頼む!ガメラ頑張れ!」と言いたくなること間違いなし。
怪獣映画では珍しい屋内戦闘(京都駅構内)も新鮮だったが…ガメラもイリスも基本的に棒立ち。暴れた瞬間“屋内”の”屋”がぶっ壊れて見せ場が消えてしまうので、なるべく動きは程々に...という製作陣の配慮が伺えてしまう。舞台立て自体は見事なので非常に惜しい。
また、本作は怪獣同士の戦いに巻き込まれた一般市民の悲劇が物語のテーマとなっているが、非常に面白そうでありながらもセンシティブな題材である為に落とし所に苦心したような印象がある。ターゲットを大人に絞った作品であったならば、もっと物語に深みと痛みを持たせることが出来たのかもしれない。
このように、本作は非常に良い素材を持ってはいるが、あと一歩それを活かせなかったような気がしている。ディレクターズカット版があれば印象が異なってくるのだろうか…?
※画像は全てAmazonより引用しました。