タイで「生グァバ」を食べました
「どの食べ物が一番好きですか?」
非常に戸惑う質問だ。和洋中その他諸々、どんな料理にもそれぞれ好きな食べ物がある。一番なんて決められない。エンガワの寿司も家系ラーメンも厚めの牛タンも西湖(和久傳の蓮根菓子)も、あれもこれも好きで──と事細かに喋っていたら、きっと相手をウンザリさせてしまうだろう。
その一方で。
「どの飲み物が一番好きですか?」
と問われたら、間髪入れずにグァバジュースを挙げると決めている。
「何だそれ?」「どんな味なの?」疑問に思われる方は決して少なくないはずだ。
グァバ。南米や東南アジアなどで生育している、いわゆるトロピカルフルーツの一種。リンゴやオレンジといった日本国内でメジャーな果物/ジュースと比べると、間違いなく知名度は地の底だろう。
だが、あえて断言させていただきたい。グァバジュースは知名度と反比例した美味しさを誇る。ひとたび口に含めば、どんな果物にも勝るトロピカルな風味がガツンと脳を突く。たとえクーラーの効いた部屋に居ようとも、瞳を閉じれば常夏の南国のイメージが全身に伝わっていく。茹だるような暑さを感じずに南国を体感できるとは、何たる幸福だろうか。
グァバジュースはアサヒ飲料(バヤリース)やスジャータめいらく等、様々なメーカーから発売されている。宅配ピザの大御所:ピザーラのメニューにも含まれているため、ピザーラ愛用者の方には馴染み深いかもしれない。
数ある中でも俺が特に好んでいるのは、タイ産のブランド:CHABAA製の商品。青いパッケージがお馴染みのブランドである。詳しくは輸入元:Haruna様の公式noteをご参照いただきたい。
──さて、ここまで堂々と語っておきながら誠に恥ずかしいのだが、俺は三十年余りの人生において、加工前の「生グァバ」を食べた経験が一度たりともなかった。いや、それどころか実物を見た記憶すらない。ジュースの味に満足しきっており、わざわざ本物を実食しようとの考えにまで至らなかった。
しかし、去る今年二月。十年振り三度目となるタイ・バンコクへの渡航で、遂に生グァバを実食する機会に恵まれた。当時の記憶と日記を参考にしつつ、以下に実食レポートを述べていきたい。
さて、俺が意図せずグァバと対面したのは、宿泊したバンコク市内のホテルの朝食だった。主食を終え優雅なデザートタイムの時間にしよう……と思った矢先、何と「GUAVA」と記されたプレート、そしてカットされた薄緑色の果実が目に飛び込んできたのである。俺の知るグァバの色とは似ても似つかないが、間違いなくグァバだった。「GUAVA」が示すものは他に存在しないだろう。
先述したCHABAA《チャバ》等々のグァバジュースは、総じてパッケージ・中身共に濃いピンク色をしている。緑色のグァバ/グァバジュースを目にしたのは初めてだった。決して熟れていないわけではなく、こうした色の品種があるらしい。現地で売られていたグァバジュースのパッケージも緑系の品種。渡航中にピンク色のグァバ/グァバジュースを一度も見なかったので、タイではこちらの方がメジャーなのだろうか?
では、本題こと実食レポートに移ろう。
まず、果肉にフォークを挿し込んでみる。
その感触は中々に硬い。ぎっしりと実が詰まっている感覚が右手に伝わってくる。色のイメージ通り、さほど熟していないのか……?いや、そのようなものを出すホテルに泊まった覚えはない。
そして、恐る恐る口に含み咀嚼する。
しゃりっとした歯応えが口内に響き渡る。繊維質で、粒っぽいざらついた感覚が舌に残る。いかにも「モノを食べている」という実感を伴う、好みの舌触り。
肝心の味は、仄かな青みと爽やかな甘さの双方が口に広がり美味しい。日本人に馴染みのある果物で喩えるならば、和梨と洋梨を足して二等分したような印象である。ジュースを飲んだ時に感じた濃厚さとトロピカル感は薄いが、これはこれで悪くない。
なるほど、これがグァバの正体だったのか。とろみのある果肉で濃い味の果物を想像していたものの、やはり直接食べてみなければわからないな……。そのように納得し、俺は仕事を終えてタイを去った。
……と、これが「緑色(白色)系グァバ」の食レポになる。食べた当時は上記の通り(非日常空間におけるテンションの高まりも相まって)納得したが、改めて振り返ってみると、慣れ親しんでいる「ピンク系グァバ」を食さなければジュースとの比較ができないのではないか……?と考え込むようになった。
グァバは海外へ行かなければ食べられないものではなく、日本国内においても沖縄で「バンシルー」の名で流通しているそうだ(ピンク・緑白の双方とも売られているらしい)。やや高価ではあるが取り寄せも可能とのこと。イメージ通りの味かどうか、改めて確かめてみるとしよう。