Return to Ivalice ─また「FF12」へと旅に出る
○「イヴァリース」へ想いを馳せる
「ファイナルファンタジー12」の、クリア済データをロードした。あの世界へ、久々に旅をしたくなったから。
このささやかな旅は、「ファイナルファンタジー(以下FF)14」の外伝シナリオ「Return to Ivalice」をクリアしたことに端を発する。
「FF14」作中で伝説と化した幻の地:イヴァリースを巡る物語を執筆したのは、その創造主たるクリエイター:松野泰己氏。イヴァリース関連作品──特に「FFT」「FF12」に登場するロケーション・キャラクターの「そっくりさん」達が登場し、原作者自らが過去作の新解釈(=ある種のパラレルワールド)を描いた、何とも贅沢なサブストーリーであった。
「イヴァリース」については以下のリンク先を参照されたい。基本的に作品毎に異なる世界観・時間軸を描いてきたFFシリーズにおいて、松野氏が生み出したこの舞台そのものが、非常に特異な設定と言ってよい。
様々な時代を渡る「イヴァリース」作品群に、俺の思い入れが深い作品は数多い。
例えば「FFT」は、暗黒中世ヨーロッパ風世界観に似合わぬ熱い台詞回し・掛け合いに胸を熱くした。「FFTA」では現代社会(によく似た世界)を生きる主人公達の、少年期ゆえの純粋な苦悩に心を掴まれた。どちらもゲームとして優れており、遊びの面でも評価に値する作品である。強過ぎるキャラクター・理不尽な高難易度など、一部のバランスに難はあるが。
そんな「イヴァリース」関連作品の中で、俺が特に気に入っている作品は「FF12」である。
本作は「物語が尻すぼみ」「スターウォーズへのオマージュが強すぎる」「キャラクターが地味」等と、少々微妙な評価を受けることが多い。プロデューサー・ディレクター・シナリオライターを掛け持ちしていた松野氏の、病気療養による途中降板の影響も拭い去れないだろう。
そのような逆境で生まれた作品ながら、「FF12」──特に現行ハードで発売・配信中のリマスター版「ゾディアックエイジ」のRPGとしての面白さと密度は、シリーズ中でも群を抜いているように思える。ストーリーは確かに地味ではあるが、主人公達の成長・物語の裏で巻き起こる策謀・様々な伏線とその回収等、一応は不足なく描けている(もっと欲しかった描写があることは否めないが)。また、ストーリーと無関係の広大なマップ・ダンジョンの探索、豊富な収集要素、特色のある様々な武器・防具によるカスタマイズ性は、何度遊んでも飽きることがない。事実、俺は少なく見積もっても本作を過去6周プレイしている。
そして、忘れてはいけない本作の魅力は世界観。世界設定が記された膨大なフレーバーテキストも勿論だが、視覚的な方面の魅力も筆舌に尽くしがたい。
だからこそ、俺は時折「FF12」の世界へ、用もないのに降り立ちたくなってしまうのだ。「Return to Ivalice」をクリアしてその熱が久々に高まったことが、本稿を執筆した理由である。
○「FF12」の世界を巡る
……という訳で、俺はNintendo Switchを起動し、DL版の「FF12 ゾディアックエイジ」を立ち上げた。なお、以下に掲載したスクリーンショットは、全て俺のSwitchにて撮影したものである。
まず訪れたのは「王都ラバナスタ」。敵勢力の占領下にある、冒険が幕を開ける砂漠の都。
発売当初、Web上では「広すぎる!」「迷う!」等の様々な意見が飛び交った街だ。多くのプレイヤーがその広さと賑わいに驚愕したと思われるが、俺はその景観に目と心を奪われた。建物や青空の美しさと同時に、砂漠を舞う砂や太陽の激しい熱すら感じられ、実在感を覚えた思い出がある。
なお、広さに関する問題点は、「インターナショナル版」以後に実装された「倍速移動機能」で解決できる。この街は、機能の有り難みを早くも堪能できる場所でもある。
次に「空中都市ビュエルバ」。空中に浮かぶ島に造られた、特殊鉱石の採掘で潤う街。
見上げた先も足下にも紺碧の空が広がる光景は、まさしく「ファンタジー」の舞台に相応しい。本作が発売した際に放映されたCMにおいても、ビュエルバへ向かうシーンのムービーが尺を占めていた記憶がある。
なお、町外れの採掘場(ルース魔石鉱)の奥地には桁違いの強敵が潜む。何かの拍子に街へ現れないことを祈るのみ……。
続いて「帝都アルケイディス旧市街」。主人公パーティの敵対勢力の国家、その旧首都にあたる街。
雰囲気はうらびれており、住む人々は打ちひしがれている。挙げ句の果てに公然と人身売買まで行われており、行政も機能しているか怪しい。とんでもない場所である。
とはいえ、石畳が敷き詰められている落ち着いた街並みからは、不思議と居心地の良さを覚える。「通りすがりの観光客」の驕った考えだろうか。
そんな旧首都を尻目に発展を続けているのが「帝都アルケイディス」。旧市街の寂れっぷりはどこへやら。我々が暮らす現代社会以上の発展を遂げた都市には、数多の高層建築が立ち並んでいる。
最後に「港町バーフォンハイム」。
こちらは物語の終盤に立ち寄る街で、イベントの数が他の街に比べて圧倒的に少ない(製作納期の関係と思われる)。本作をプレイした方々でも、さほど印象に残っていない……と感じる方が多いのでは。
だが、これだけの美しい街並みを誇っている場所なのだから、通り過ぎてしまうのはあまりに勿体無い。
……さて、紹介したロケーション・掲載したスクリーンショットは、「FF12のイヴァリース」内のごく一部に過ぎない。「ダンジョン・フィールド編」等、紹介しようと思えばいくらでも可能なのだが、今回は「街」の一部のみに留めておきたい。そうでなければ、いつまで経っても記事の投稿に至らなくなってしまいそうだ。
もし、本稿のわずかなスクリーンショットで「FF12」の景色の美しさに惹かれた人がいるとしたら……。何かの折に是非、自らの手でイヴァリースに降り立っていただけたら幸いである。