さなぎ
先週末、帰宅したら
玄関先でなかなか派手な姿をした芋虫が
私が大切にしている植物に
ぶら下がっていた。
黒・赤でトゲトゲのキャタピラ。
いかにも毒虫っぽかったが
よく見るとし「し」の字になって
じっとしている。
蛹になる直前だな。
そう思ったら、
むげにぽいと捨てるのが
無粋な気がして、
そっとしておいた。
数時間後見に行ったら、
みごとに蛹化していた。
この蛹には棘があるのだが、
その棘が、なんと輝いている。
私は初めて見るこの蛹の
メタルな派手さに驚き、
なんの蛹かと調べた。
するとすぐにわかった。
スジグロヒョウモンだ。
蛾ではない。蝶になる。
一番下に蛹の画像を貼っておくけど
苦手な方はスルーしてください。
これは園児が喜ぶと直感し、
職場に持って行った。
みな面白がり、
ある年長の子は
私がたまたま持っていたボールペンを
私から奪って、すぐスケッチした。
すごい上手で喫驚。
まだ5歳だよ。
あとで担任に訊いたら、
この子は別の蛹の絵も描いて
展覧会に出したんだそうだ。
ちなみに幼虫は、
見た目は派手だが
毒はないのだそう。
帰宅してさなぎがいた周辺をよく見たら、
同じ幼虫、
そして先に成虫になった蝶がいた。
きょうだいだろうね。
蝶は羽化して数時間といった出立ちで、
羽はなんだか瑞々しく透明感があり、
若々しく、美しかった。
ところで、蛹の棘がなぜ光るのかを
ChatGPTに質問してみた。
以下はその答え。
スジグロヒョウモン(Parnassius glacialis)の蛹に関しては、棘が光って見える理由として、殻が透明で中が透けて見えるためであるという説が有力です。スジグロヒョウモンの蛹は、その殻が部分的に透明であり、内部の組織や構造が透けて見えることがあります。これにより、特に光の当たり具合によって光るように見えることがあるのです。
へぇ〜〜〜!!
この光って見えるのは、蛹の中身なのだ!
面白いねえ。
あの赤だの黒だのの毒々しい姿から
このメタリックな外見に変化し、
しかも中身は透けると光る、
そんな構造に大変化している。
そして成虫になると
美しい蝶となって羽ばたく。
私はこれが
今自分が経験していることと
重なって感じられた。
突然父が世を去った
あの日の前の自分は
毒々しい幼虫。
世間の何も知らなかった
毒々しい私だ。
父が死んだその日から
私は動けなくなった。
蛹だ。
私という存在が崩壊したように思えた。
蛹の体内はドロドロなのだと聞く。
私はまったくの別人になってしまったかも。
10年以上私は蛹だった。
思い出すだけでも苦しくなる、
そんな経験だった。
しかし私は、
「死があるから美が輝く」
という仮説を抱くほどに変貌した。
体の中が輝く蛹。
動かなくても、
内部は輝いているのだとしたら
それはたとえ外からは
動かないように見えて、
実は価値あることを
象徴しているように思えた。
私が蝶として羽ばたく日は
来るのだろうか。
今の変化としては、
父の死という出来事を
しまっておく引き出しが心の中にできて、
その中に収まるようになってきたと
感じている。
ときどき引き出しから出てくるが
その時私は嘆き悲しむというより
なにかを愛おしむような、
そんな気持ちになったりもするのだ。
ちなみに、その蛹は
今朝羽化して飛び立った。
飛び立つ直前の様子を撮影したのが
トップの写真。
光る棘の部分が透明だというのは
本当だ、写真を見るとわかる。
最後に、私が撮影したメタルな蛹の画像。
見たくない方もいらっしゃると思うので
その場合は下にスクロールしないでくださいね。
幼虫を見たい方はこちらをどうぞ。