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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年2月の記事一覧

大阪音楽大学と脇田敬教授とのトラブルの背景と影響について

 本当に残念なお話です。大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻の中心的存在だった脇田敬教授が、突然契約終了通告されたという事件です。教育主任から理由の明示もなく、そもそも正当な理由が存在しないので、提訴するということになっているという経緯です。詳細はこちらのブログをご覧ください。  ミュージックビジネス専攻を企画したのは僕ですし、彼に教授のお願いもしましたから、もちろん無関係では無いのですが、僕自身、突然通告をされて3月末で特任教授を退任しますし、本件は弁護士も介在して、司直

2023年1~2月に聴いたべらぼうにかっこいいアルバムをまとめるだけ

 2023年1~2月に聴いたアルバムの中でどこかいいなと思ったアルバム120枚(期間外のリリース含む)、その中でも特にかっこいいなと思ったもののまとめです。  イヤフォン・ヘッドフォン・スピーカーの準備は整いましたか? 張り切って参りましょう。 Vulfpeck / Schvitz (2022) サウナが題材のポップでファンクな楽しい一枚。刺繡のジャケットが可愛らしい。 Amazonで聴く/購入する Bandcampで聴く/購入する  こちらのアルバム(というかVulf

interview SYLVIO FRAGA:現代アフロブラジレイロ・ジャズの気鋭レーベルを率いる奇才が語るホシナンチとレチエレス

これまで歴史は欧米の白人中心の視点や価値観で書かれてきた。それをアフリカ系やアジア系も含めたあらゆる人々の視点も考慮した上で、再び編み直そうという試みが世界中で増えていることは多くの人が感じていることだろう。それは音楽においてもかなり顕著で、過小評価されてきたり、失われていたヘリテージ(文化遺産)の価値を引き上げ、ふさわしい評価を与えようとする流れは年を追うごとに強まっている。アメリカの状況を追っていると、アフリカ系アメリカ人によるヘリテージの価値を見直す動きは日々行われてい

¥300

dhrmaの“ビートメーカーとJ Dilla”

Table Beats Rec.がお送りするDilla Month企画“ビートメーカーとJ Dilla” 日本のビートメーカーにJ Dillaの魅力や影響を受けた部分などをアンケート形式でお答え頂きます。 第九弾は“dhrma”の登場です。 【自己紹介をお願い致します。】 dhrmaです。普段あまり喋らない分この機会に個人的見解をつらつらと。 【あなたが一番好きなDillaのアルバムは何ですか?】 「Dillatronic / J Dilla」 【このアルバムの好き

¥200

#13 ベーコンより見えない-リリック解説

VOLOJZA(ボロジャザ)という名前でラップをしたり、ビートを作ったり、アートワークをやったり、映像やったりしています。 諸々メモがわりにかいてこうとおもいます 自分の「楽しくやるfeat QN」という曲に 「ベーコンより見えない 未来を想像 一緒にどう?」  というリリックがある。  気に入ってるリリックだけど意味わからないと言われればそうかもなと思ったので解説をしてみる。 ベーコンというのはケビンベーコンというアメリカの俳優さんのことである。 何故ケビンベーコンなの

For Tracy Hydeの解散を考える/セカイから世界へ

トレイシー・ハイドという子役が出演した1971年のイギリス映画『小さな恋のメロディ』を初めて観たのはFor Tracy Hydeの大傑作アルバム『New Young City』(2019)を聴いてしばらく経った後だった。当時の年間ベストアルバムにも選んだバンド名に関連してる人物の映画なのだから、さぞこのバンドの根源に繋がる作品だろうと思っていたが、観終わった後にバンド名の由来はWondermintsの楽曲「Tracy Hide」から取られていたと知って少々脱力してしまった。映

異色なリミックス・ワーク

新しい音楽のスタイルが生まれるには様々な要因がある。レコードの回転数を変えたことによって生まれたものや、機材のトラブルによって偶然生まれたもの、技術の発展によって生まれたものなど様々あるが、リミックスという手法/コラボレーションで新たなスタイルが生まれることもある。 BeckとAphex Twin、BjorkとCARCASS、坂本龍一とRichard Devine、hideとCorneliusなど、異色な組み合わせによるリミックスはときに思いがけない発見があり、新しい音楽の

成熟期に入った世界の音楽ストリーミングサービス。「次のより良い仕組み」への議論が始まる

Spotifyの事業報告書に基づくMBWの記事  Music Business Worldwideの記事の紹介と解説です。  Spotifyの楽曲再生数をアーティストの所属別に見ると、3大メジャー(ユニバーサル、ソニー、ワーナー)とMerlin加盟社分を合わせて75%となり、過去5年間で12%のシェアを失っているという内容です。すなわち、従来型のインディーレーベル=Merlin加盟社以外のDIY系のアーティストの比率が25%になったという意味になります。  これを、デジタル

これからも聴かれてほしい企画系カバーアルバム

インターネットやサブスクリプションの進化で過去の音源に容易にアクセスできるようになった現在、名盤と認定されたアルバムについてはリリースから数十年が経過していても世界中の多くの方に聴かれ続けています。 一方で名盤リストから漏れた音源に辿り着くのは容易ではなく、廃盤かつサブスクリプションに無いとなれば尚更です。そうやって徐々に聴かれなくなり忘れられていく音楽がどれだけあるかと思うと、実に勿体無いように思う今日この頃です。 さて、ここで取り上げるのはカバー曲を中心とした所謂「企

【特集②】日本人によるダバダスキャット集

スキャットとは まず、スキャットとは。早速Wikipediaにお世話になりましょう。 はい、想定通りの解説ですね。 ”意味のない音(声)を楽器として表現” 第一人者はLouis Armstrong氏。収録中に歌詞を忘れてしまい、適当な言葉で歌ったNGテイクがスタッフに受けて、そのまま使用されたのがこの歌唱法の起こりだそうです。 ダバダスキャット集 さて!ここから日本人によるダバダスキャット集です。 「ドゥビドゥビ」、「パヤパヤ」等ありますが、ダバ縛りでいきます。 曲の一

Skrillex "Quest for Fire" "Don't Get Too Close"

アメリカ・ロサンゼルス出身のプロデューサーによる、約9年ぶりフルレンス2作目/3作目。 スクリレックスと俺。その出会いは5年前の FUJI ROCK FESTIVAL に遡る。もちろんそれ以前から楽曲は知ってはいたのだが、2018年のグリーンステージ出演時が自分にとって彼との初対面であり、それは同時に、自分が初めて体験する EDM パーティーでもあった。立て続けに投下されるゴリゴリのアッパーチューンの応酬。力強いアジテーションで鼓舞され続け、次第に肩を組み合ってバウンスを共

2022年のベストアルバム:「声」

「BEST OF 2022」に引き続き、テーマを決めてこの年のベストアルバムというか印象に残った作品を紹介してみたいと思います。 タイトル通りなんですが、2022年には(あくまで私のよく聴くようなアンビエントだったり抽象的なエレクトロニック・ミュージックなどの分野で)声の存在が耳を引く作品に多く出会いました。 これらの作品はそれぞれ声の所在(アーティスト自身の発声なのか、既存の音源をサンプリングしたものなのかなど)や用い方は大きく異なっているので一緒くたにして何らかのムーブメ

2023 Jan. R&Bリリースまとめ

R&Bのニューリリースで気になったモノを、ひと月ごとにまとめて記していきます。 (筆者の独断セレクトなのでカバーしきれてない部分もありますが、ご容赦ください。) 〈ヴォーカルが際立っている新譜R&B〉をテーマに作っているSpotifyプレイリストでは、記事になっていない曲も追加してるので、そちらもよかったらチェックしてください! アルバム / EP編Vedo 『Mood Swings』 (New Wav Music Group / Island Prolific / E

a piece of Burt Bacharach

偉大なる作曲家バート・バカラック(Burt Bacharach)が2023年2月8日に94歳で亡くなりました。「過去100年のポピュラー・ミュージック界において、まぎれもなく最高峰のソングライター」と称賛される彼の音楽を、僕も子供の頃からセルジオ・メンデスのカバーなどを端緒として聴いてきました。 ディオンヌ・ワーウィック、ダスティ・スプリングフィールド、エルヴィス・コステロ、カーペンターズ、トム・ジョーンズ、キャロル・ベイヤー・セイガー、前述のセルジオ・メンデスなど、書ききれ