21.風ってね、不思議な物語を届けてくれるんですよ!
「風の知らせ」
風って不思議だと思いませんか?
冷たい風、暖かい風、温度を感じない風、強い風、優しい風がありますね。
こんな風もあるのがわかりますか?
部屋の中で、風もないのに突然カーテンがゆらりとしたり、テーブルの紙が揺れたり、ろうそくの炎が突然消えたり、頬に生温かな風を感じたりしないでしょうか?
壁に貼り付けてあるカレンダーがゆらり、置いてある新聞がまくれたり、干してある洗濯物がふらりと揺れる時がありますね。
これって風のいたずらなのでしょうか?
風もないのに、木の葉や花が揺れ、たんぽぽの種子はふわふわと浮いています。それは当たり前の事だよ、と言う人が大半かも知れませんが、私は何かの〈知らせ〉として感じてしまいます。
それは、日々の生活の忙しさの中ではなかなか感じ取れるものでなく、心が静かで、安らいでいる時に感じるものだからです。
私は幼い頃から大自然の中で育ち、遊び生活していました。
私にとって大自然の探訪は毎日が大冒険の連続でした。友達たちと遊ぶのも楽しい事ですが、ひとりきりで大自然を冒険するというのは怖い事ですが、とても楽しい事でした。大自然の山々を眺める事はもちろん。小さな虫たちや野花を見るのも楽しい。鳥たちのさえずる声を聞きながら、澄んだ青空を眺め、樹木を眺めると何か安堵感があるのです。
特に様々な植物の花や葉っぱを観る事も好きでした。まったく人の気配のない森の中に入ると、大自然の声だけになります。湧水からの音、小川のせせらぎ、鳥たちの声、虫たちの歩く音などです。まるで人気のない場所ですが恐怖心はありません。
たまに誰かに見られているような錯覚がありますが、きっと気のせいでしょう。
そこではいつも不思議な発見をしました。人が手を入れたものではありませんが、自然が生み出した庭園です。辺り一面に花々が溢れる場所があり、子供心にここは天国かも知れないと勝手に決めつけたりしていました。
反面、湿気だらけでじめじめしとした場所もあり、ヘビや動物たちと出くわすと互いが驚き、思いっきり駆け足で逃げる時もあります。そこは、人気のない、私だけの誰も訪れない楽園でした。
ある日、いつものようにひとりで探検に出向きました。かなり危険な崖に到達して、そこで足を踏み外し、折れた木々が太ももに刺さり、あまりの痛みでうずくまっていました。出血もあり、私はただうろたえていました。でも、よく怪我もしていたのでこのような時は、じっと痛みが去るのを我慢します。傍にはドクダミの葉もありますし、薬草類も豊富です。とりあえず止血して、痛みが治まるまで、倒れていた大木の上で寝転ぶ事にしました。
辺りは風もなく、太陽の日差しもほどよく、大自然の音たちだけです。怪我をしてしまいましたが、なんと幸せなのでしょう。
やがて痛みが少なくなり周りを見渡すと、この葉たちがゆらゆらと揺れているように見えます。別に木々に動物がいるわけでもなく、風もありません。この葉のゆらゆらは隣の木に移動し始めました。私はリスか、子猿でもいるのかと思い、後を追いかけました。何でしょうか・・。
いつのまにか山を下り、街の灯が見え、道路の脇に手を振る人影がありました。
それは、私の母でした。
「何してるの?遅いよ。夕ご飯の準備もできている。心配していたわ・・」
母は私の太ももの傷を見て笑いました
「良かったね、その程度で。山は危ないよ!」
母はそれ以外何も言わず怒りませんでした。
大人になった私は、このような事をよく想い出すようになりました。
あの時の木の葉を揺らす風は、母の想いが風となり、道案内をして私を家に送るためのものだったのかもしれない、そう感じるのです。
私が大人になり局地に立たされた時、最大の困難と遭遇した時、最悪の苦しみの時、死んでしまおうと思ったとき、どうしてよいか分からない時、必ず風が吹いていた事に気づきました。そして、そのどうしょうもない時に必ずと言って良いほど、何かしら〈知らせ〉が起こるのです。
それ以来、私は風に注意するようになりました。
また、風だけではありません。室内の天井から配管が破裂し突然水浸しになったり、ある場所に向かう時、故障でもないのに車が動かなくなったり、電車が止まったりと様々な偶然が重なり、結果、それが良かったというケースが多いのです。ただし、仕事など日々に生活に追われて注意(意識)するのを忘れているとその〈知らせ〉がわかりません。
しかし、このような事は私だけでなく誰にでも起こっている事です。別に科学で証明出来なくとも、信じられない事だとしても、それは、その人の自由です。ただ、注意して耳を傾けて見て下さい。きっと何かしらの風が、〈知らせ〉が来ます。
「そんなことない」
「ありえない」それでもかまいません。
私のおすすめは、この事を注意し、意識することによって、きっと人生がより楽しく感じるかもしれませんよ。
風って不思議な話を届けてくれるのですよ、誰にでも。
coucouです。ごきげんよう!