マインドクエスト 第27話 元JUDY AND MARY
登場人物
ヒデ(俺)…生涯安泰を目指す欲深い商人
フジ…勇者になりたくなかった勇者
ホセ…心の支柱である僧侶
チャマ…ネガティブな英雄戦士
カイト…JUDY AND MARY元メンバーのコック
ユキ…JUDY AND MARY元メンバーの武道家
今日も無事以来クエストが終わり、ホセの提案がありいつもと違う酒場で夕ご飯を食べる事にした。
「最近、依頼クエストの数少なくなってない?困ってる人が少なくなってきたのかな。」
「確かに。前は掲示板にびっしりでしたよね。最近ではあと10枚ほどでしたよ。」
フジくんも不思議そうに話している。
その時、周りに座っていた客同士で喧嘩が始まった。
「魔王を倒して一生遊んで暮らすんだ。黙れ!お前らはすっこんでろ!」
「黙るのはお前らの方だ!まだBランクしかできていない分際でよく言えたもんだな。俺たちが魔王を倒して生涯安泰になるんだ。」
そんな声が聞こえてきた。そうか。依頼クエストが急激に減ってきたのは、この人たちの影響か。
しかし、魔王を倒せば国から生涯安泰の生活が送れるという噂はかなり世の中に広がっているようだ。ライバルはたくさんいるのか。
酒場のマスターが見かねて
「おい!お前たち俺の店で喧嘩すんなら出てってくんな。うるさくて味が落ちる。」
「なんだとチビ、コラァ。やんのかコラァ。」
先程喧嘩していた客の1人がマスターに絡みはじめた。
150センチほどか。背の低いマスターだが、ムキムキで筋肉がやばい。
「あんた。下がってな!ごめんなさいね。うちのが余計なこと言っちゃって。他のお客さんの迷惑になるから、詳しいことは裏で聞かせてくれる?」
チャイナドレスを着た背の高い中年の女性の従業員が喧嘩をふっかけてきた客をお店の外の方に連れて行った。
「死んだな。」
マスターがボソッと言った次の瞬間、木の箱が破裂したような音が外から鳴り響いた。
「あいつに理由聞いたけど、ありゃ、客が悪いわ。」
チャイナドレスの女性店員が親指を後ろに立てて言い放った。
俺たちは外を見にいくと、砂埃が辺りをまとい、暗くて見えにくかったが奥の方で倒れて動かない人がいるのがわかった。
「コワッ」
フジくんがニヤニヤしながら一言。
「あんたらの仲間だろ!助けにいってやりな。」
外で倒れている客のメンバーに声をかけ、間接的に店から出て行かせた。
そして、店で喧嘩をしていたもう一方の客にマスターが話しかけた。
「お前らには魔王は倒せないよ。」
「今まで頑張ってきたのに、なんてこというんですか。私たちはもうAランクを達成しましたし、先日魔王のいる麓まで行ってきたんですよ。もう一息なはずです。」
「それで?あそこの扉は開けられたのかい?」
マスターがはやしたてるように質問している。
「…いや、まだ。」
客はばつの悪そうな顔をしている。
「気分悪いから他の店で飲み直しましょう。」
居づらくなったのか、客は出て行ってしまった。
結局お店は俺たちだけになってしまった。
「やっと来たか。なっ!おまえ。」
「ほんとだね。待ち焦がれたねぇ。」
女性定員がマスターの肩を抱いて俺たちに話しかけてきた。
「あの。失礼ですがどなたでしょうか。」
俺が聞くと
「なんだよ。ホセ!俺ら夫婦のこと伝えてくれてないわけ?」
「ごめんなさい。伝えない方が面白いかなと思って。実はこの前実家のお寺に呼ばれたのは、この酒場に行くように私の父に言われたんです。」
ホセは秘密を楽しむ癖がある。
「はじめまして…。ではないんだな。フジ。お前がまだ小さいときには何度かあったが覚えてないか。俺とこの奥さんはフジの父親とホセの父親とJUDY AND MARYというパーティーを組んでたんだ。」
「私はユキ。旦那のカイトよ。宜しくね。
パーティーではこの人がコックで、私が武道家として魔王と戦ったのよ。」
だから奥さんは物凄く強かったのか。
「フジ。時が来て、あなた達がこのお店に来たらこれを渡してねとあなたのお父さんに言われていたのよ。」
ユキさんはそういうと、腕につけている腕時計を取り、それをフジくんに渡した。
「もう一つはお前のだ。」
カイトさんも腕から腕時計を外し、ホセに渡した。
見せてもらったが、フジくんの腕時計は右半分だけにの文字盤が。ホセのは左半分だけに文字盤が描かれている。残りの部分は暗めの紫色がベースで白い点々が散りばめられている。星空のような感じだ。
「この時計を合わせた時に星座ができる。その星座を目掛けて歩いていくと最後の依頼クエストがあるわ。」
「そこには勇者と僧侶しか入れない。だからさっきの客達には絶対に魔王に辿り着けないのさ。そのクエストをクリアすることで、魔王のいる場所に繋がる最後のカギが手に入る。
これは、フジ。お前のお父さんからの依頼クエストだ。」
つづく
次の話
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