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水内川詣り

春から湯来に暮らし始めて三ヶ月と少しが経った。
最初の二ヶ月は、引越しの片付けと整理(未だに終わっていない)と、新生活へ慣れていくことで、もう毎日へとへと。

このままでは仕事が進まない!やりたいことをやる時間も取れない!
ということで、朝早起きすることにした。

ここ一ヶ月くらい、毎朝大体四時半から五時の間くらいに起きて、朝の時間を満喫している。

朝日が昇る前の、束の間の神聖な時間。
にゃぁにゃぁと足にまとわりついてくる二匹の猫たちに朝ごはんをあげて、
携帯とカメラを持って、しとしと雨が降る青い世界へ出る。

鳥や蛙たちに混ざって、朝四時四十五分くらいまでヒグラシが鳴いている。
ヒグラシは一日の終わりに鳴くものだと思っていたら、一日の始まりにも鳴くのだ。知らなかった。

家の裏に広がる田んぼの脇の小さな道を歩いて、水内川へ行く。
水内をずっと守っている神様のような川。
川霧が立ち込めていて、幽玄な世界。
その美しさに思わず感嘆の声をあげてしまう。

やさしい雨の音
夏の訪れを歌うヒグラシ
朝を讃える鳥たち
包み込んでくれるような水内川の流れ

朝はいろんな音で溢れている。
夜明け前だけに聴くことができる束の間の朝の讃歌。

刹那に変化していく美を捉えようとしている時は
瞑想しているみたい。
今という瞬間に心を寄せる。
心が浄化されて、体からすっと根が伸びていく。
地球の真ん中に、その根をおろしていく。

水内川にお礼を伝えて家へ向かって歩き出すと、
犬のお散歩中のご近所さんに会う。

「おはよう。上から見よったら黒いものが動いとって、え?熊?って思ってしばらく見よったら奏ちゃんだったわ。」と。

最近、湯来で熊がよく出没するとはいえ、
熊に見間違えられたのは初めてだった。

山の向こうから朝日が顔をだす。
力強く眩しい光。
なんと清々しく美しいんだろう!

さぁ今日も一日を始めよう。




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