今回の読書対象は Epsode 24 "The buddha" です。全3部で構成されたこの小説の最後の部、Book 3 の始まりです。647 頁まで続くこの小説の 481 頁にまで、なんとか読み進んできました。
1. 映画館では "Coming Soon" の表現でお馴染みの予告編、その手法がこの小説に採用されます。
語り手(書き手)のラシュディ氏は、読者の息がこの辺で途絶え勝ちになるのを見越しているようで、この物語の聞き手であって、同時に書き進める仕事を傍らで励まし続けるパートナー(兼、家政婦?)の Padma(パードマ)に向けて気を逸らさずに聞き続けてくれ(下書きに目を通してくれ?)と頼み込むシーンが現れます。
2. 陸軍兵士になったサリーム(私)は 21 才の兵士です。
カラチの街に住まいを移しタオルの生産工場を始めた両親と暮らしていた16才のサリーム。兵士になるなら自殺でもと考えていた最中にインドからの爆撃(インドとパキスタンの戦い 1965 年の頃)が自宅を襲い一瞬にして両親と母の姉(絶頂期には校長の職にあった姉)を失い、サリームは頭に瓦礫の直撃を受けもの陰に二日ほど気を失って倒れていました。発見され陸軍の病院で健康を回復しますが、これまでの記憶は失ってしまいました。そんな彼ですが「犬のように優れた嗅覚」ばかりは健全です。今はこの厄災からも5年が過ぎました。陸軍の兵士です。(兵士になるに至る事情・行きがかりもこの小説にとって決して軽視できない重要な話題ですが、私の投稿記事では触れません。)
アユーバ、ファルーク、シャヒードは 15-16 才の少年志願兵です。何万人というスケールの数の兵士群としてカラチだかラワルピンジだか、いずれにしろ西部パキスタンからセイロンを経由して、半分は水(海水か?)に浸かっているような街、ダッカに送り込まれてきました。東部パキスタンをパキスタンから分離しようとする活動家を力で抑えようとする中央政府の計画です。この一団には過去の記憶を失ったサリームが居て、この3人の少年兵を部下に抱え4人で成るCUTIAと通称される活動部隊の一つ、UNIT 22を拝命します。以下の引用は、この部署・組織への配属が命じられた翌朝のことです。場所は兵士の宿舎、ダッカの近辺であろうけれども詳細は教えられていません。
3. サリーム("a man-dog"と呼ばれている)は 21才。6-7 才年下の部下である3人はこんな彼に "buddha" なる愛称を発案します。
このあだ名は下級レベル兵士がチョットした悪戯で言い出したに過ぎなかったのですが、ラシュディにはストーリーの背後に潜ませ「読者に読み取らせたい主題」を一瞬にしてストーリーに絡ませようとの(軽いノリの話題から小説の重要な主題に振り向ける)計算があるのでしょう。
4. Study Notes の無償公開
エピソード 24 "The Buddha"(原書 481 ページから 501 ページ)に対応するStudy Notes(第14回)を無償公開します。前回同様に A-4 用紙に両面印刷すると A-5 サイズの冊子に仕上がるように調整されています。