この小説の出版後 40 周年を記念する再出版に当たってCNNが報じた特集記事の邦訳を CNN の日本語サイトに見つけました(2021 年 4 月の記事)。ご参考まで。これに対応する英文記事も公開されています。
1. この物語の語り手は料理人、お客には超絶の料理を味わって頂くのだと精魂込めた 皿・物語 を差し出します。
お客(読者)に「"料理人" それも "お屋敷に付属の料理担当の召使い" に過ぎないのかねあなたは? そんな程度で私を満足させられるのかね?」と挑発された語り手は次の通り対応します。
2. 語り手がその小説の「地の文章」において自らのこの役目へのスタンスをこんな風に語るのです。
将に命がけで「王様の気に入るお話」を来る夜も来る夜も繰り出す千夜一夜の物語にあるシェラザードの上を行こうとする意気込みようです。ところがこの文章、それと同時に社会を構成する人々、その一人ひとりが営む日々のあり方がその人のそしてその子、孫の存在・有りようを方向付け、その結果として社会をも形つくることを読み手に訴え、この辺りにこの小説のテーマがあることを示してもいるようでもあります。
3. 群集心理で人が煽られるシーンに Michael Morpurgo の小説 "Private Peaceful" の1頁を思い出しました。
青年の Lifafa Das はヒンズー家族に属する男ながらイスラム信者が殆どの居住区(muhalla)に写真覗き小屋を車で引いてきて商売をしています。この日の午前中にはこの地区にある倉庫建屋が放火され多くのバイクが焼かれ、その煙とにおいがこの地区に漂っていました。1947 年 1 月のことです。
「Private Peaceful 一等兵のピースフル」では 15 才の少年が、村のメイン道路で第一次大戦におけるフランス・ベルギーの戦線へ送りだす兵士を募るための、儀礼服で着飾った兵隊のパレードに出くわします。見物する群衆の中にいたこの少年(語り手)に歯の抜けた老婦人が働きかけたのです。
4. Study Notes の無償公開
Midnight's Children 原書の Pages 43-101 の対応する部分の Study Notes を以下に Word ファイル、並びに PDF ファイルとして公開します。無償でダウンロードできます。