2021年読んで面白かった本10冊【前編】
2021年もあと少しです。今年もいろんな本との出会いがありました。1年の終わりに自分が何を読んで、なぜ面白いと感じたか記録に残したいので、掲題のとおり、今年読んで面白かった本を10冊紹介します。本記事はその前編になります。新書だったり、新書、ノンフィクションと、ジャンルはバラバラですが、ぜひ最後までご覧下さい。
1.ブレイディみかこ『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
手に取ったとき「小説かな?」と思っていたらエッセイだった。一応分類はノンフィクションですが私はてっきりほのぼのエッセイかと思ってたのは内緒。まぁ、エッセイだったら気軽に読めそうかなと思って読んでみることに。だがあらすじを見るとそうじゃないことがわかった。
あらすじはこうだ。
補足すると、日本人の母とアイルランド人の父のもとにうまれた「ぼく」は公立カトリックのエリート小学校から、元底辺中学校に通うことになる。「ぼく」が学校で起こった出来事を通じて、多様な社会の有様を考えるものである。
息子はそんな格差や人種差別に屈せず闘う様子が描かれている。息子、、、強し。そしてブレイディみかこさんの文章力がすさまじかった。こんな完璧な文章を書ける人がいるんだ・・・。胸が締め付けられながらこの本を読んで胸の底が熱くなった。子の成長ってすごいんだな・・・。
2.旦部幸博『珈琲の世界史』
初めに言っておこう。
めちゃめちゃ面白かった。久々に良著に出会えた気がしたのである。
目次をまず見てほしい。
すごく興味をそそられる目次である。MECEな分類でいい。もう読んでみたくなりませんか?特に珈琲が好きな人。
ご存知の通り、珈琲はカフェインが含まれており眠気覚ましで飲まれる人も多いが、珈琲って最初は飲用じゃなくて、イスラム教の儀式で宗教を司る司祭が、一種のトランス状態を得る為に飲まれていた。最初は薬用として、儀式で使用されていたというのだから驚きだ。
珈琲の歴史をざっくり要約すると、原産地エチオピアから紅海を挟んで、14世紀にイエメンへもたされていく。イエメンのモカ港を通じて16世紀から17世紀にかけてヨーロッパに伝播していく。イエメン産コーヒーのことを「モカコーヒー」と呼ばれ、現在にもその名を残す。
イギリスって紅茶の文化が強いけどそもそも珈琲の文化として根付いていたのも驚きだ。珈琲の伝播がイエメン起点なのすごく意外な感じしませんか?
9章の「コーヒーの日本史」では、日本では1920年代に水商売的カフェーが流行していく。当初は女給(ホステス)による接客、夜は酒類を提供し、客は女給にチップを払っていた。今でいうキャバクラやスナックに近い形をとっていた。それが風紀を乱すとして徐々に取締られていき、1930年代以降、女給を置かず、酒類を出さない普通の喫茶店が増えていく。これが純喫茶の始まりなんだって。へぇ!へぇ!へぇ!
こんな珈琲にまつわる「へぇ!」が多い本でした。読めば読むほど面白くなる。珈琲が好きな人はぜひ読んでほしい。珈琲の歴史を知ればより珈琲が美味しく飲めますよ。って著者が言ってましたよ。
3.今村昌弘『屍人荘の殺人』
今村昌弘という作家をご存知だろうか。私は今年初めてきいた作家だ。書名から見ても典型的なクローズドサークル物かなと思いつつ読み進めていくと、中盤からハラハラドキドキの内容だった。某ウィルスの感染拡大が進む昨今の情勢と重ね合わせると、より面白く読めるだろう。
作品の内容はこうだ。
本作は「このミステリーがすごい!2018」第1位、「2018週刊文春ミステリーベスト10」第1位、「第15回本屋大賞」第3位をとるなど、本作に対する評価が高いのが特徴だ。その最たる理由として、伏線の貼り方、事件の裏で秘密裏に動く闇組織の存在、それが事件とどのように関わっていくのか、希望と絶望に交錯する青年たちはこの難事件にどのように立ち向かうのか、謎の美少女の活躍といったところだろうか。他の作家、読者からの権威付けがなされているだけあって、大変面白く読めた作品であった。
何を言ってもネタバレしてしまうが、特殊設定をクローズドサークルに織り交ぜるの流石だなって感じだし、読むの夢中になってしまう。今年読んだ本格的なミステリー小説だった。
4.町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』
多くの読者が本作を挙げている中、大変恐縮であるが、主人公・貴子の行動力、決断力、頼もしさに心動かされた人も多いだろう。書名に「52ヘルツのクジラ」とは他のクジラたちよりはるかに高い周波数で放っているため、他のクジラには鳴き声が届かないのだ。つまり「孤独に生きるクジラ」である。本作はそんな「孤独に生きるクジラ」を登場人物の描写にあてている。
主人公・貴子はひょんなことから出会った少年に、虐待の疑いがあるとみるや、孤独に生きる少年に奮闘する姿が描かれる。
終始読んでいて正直重たい話が続き、読んでいて嫌になってしまいそうだが、「52ヘルツのクジラ」というのを初めて知った私は、この少年の届かない声がいつか届けばいいのにな。。。と、いつしか涙ぐましくなってしまった。
中盤以降、主人公・貴子の壮絶な過去が明らかになったり、少年の母親との出会い、物語は一気に佳境を迎える。最後どうなっていくのか、ぜひ手とって読んでもらいたい作品である。
5.佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』
お笑いコンビ、アルコ&ピースのオールナイトニッポンのリスナーである男子大学生の主人公は、心の悩みを抱えながら他のリスナーと関わっていく中で、自分を見つめ直す物語である。私もラジオが好きでよく聴くので共感できる部分が多かった。
主人公は根が暗く、ネガティブで学校(休学中だが一応大学生)とアルバイトの日々を過ごす中でラジオの魅力に取り憑かれていく。ラジオを聴くのが生き甲斐になっている。
人間って独りでいる時間は好きだけど孤独は嫌なんだ。人との出会いが心を動かされるものがある。人の生き方を学ぶって大事。自分よがりな生き方って絶対どこかでボロが出るし、自分ではどうしようもない壁にぶつかった時、その壁を登るって絶対に他の人の手がいる。身近に精神的な支えになる存在って大事だし、人間は独りで生きていけないんだ。そんな気がする。
没入感がとても心地よく、読んでいて気持ちのいい文章だった。主人公みたいにラジオを楽しめるような人になりたい。劇的に主人公の心情に変化があるわけじゃないけど、自分にあるのはコレしかない!って感じがすごく伝わるし、未来に向けて徐々に心開いてく感じが読んでいて清々しいものがった。
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