パルメニデス(前5世紀)① 万物流転説の否定

ヘラクレイトスの万物流転説は、非常に分かり易い。
何故ならば、私たちはそれを感覚的に、経験的に理解し得るからである。人は同じ川に二度入ることはできない。いや全くその通りだ。川の水の流れは絶えることはない。ついさっき見ていた川と、今見ている川は全く別物である。その視界に入っている水は全て入れ替わっているのだから。

このような、感覚や経験を通じて得る世界観をバッサリと否定したのが、パルメニデスである。
パルメニデスの登場によって、哲学の流れは大きく変わった。具体的に何がどう変わったのかと言うと、パルメニデス以後の哲学者は、(たぶん)誰一人としてパルメニデスを無視して自論を語ることはできなくなってしまったのである。
パルメニデスの直後に登場したエンペドクレスなどは、明らかにパルメニデスに対して喧嘩を売るような主張をしているが、しかし結局はパルメニデスの理論ありきで自説を展開している。

パルメニデスの語った内容は、概ね以下の通りである。

1.あるものはある、あらぬものはあらぬ。
2.あるものは生成されず、消滅もしない。
3.あるものは不生不滅、不変不動、単一不可分である。
4.あるものは運動変化しない。
5.あるものはあらゆる方向において完結しており、円い球のように、中心からどの方向にも等距離にある。

まるで禅問答のようである。
感覚によらず、経験によらず、理性のみを用いて世界の実相を探究した結果、パルメニデスは上記のような結論を得た。そして、それらは現在、叙事詩の段片としてごく一部が残っているに過ぎない。その叙事詩は「序歌」「真理」「思惑」の三部から構成されるものであり、女神がパルメニデスに対してこの世界の真理を語る形式となっている。パルメニデスは、本当に女神の託宣を受けたのかもしれない。
続く。

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